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大魔神(1966年・日本) [2011年 レビュー]

大魔神」 監督:安田公義 脚本:吉田哲郎

 48年も生きてると、観たのか観てないのか記憶に無い映画ってある。
 「大魔神」もまさにそんな1本。試しにWOWOWでの放送を録画してみたら、ファーストカットから1コマも観たことが無かった。うおい。これはきっと「ハマの大魔神」(元横浜ベイスターズ、佐々木主浩)のせいだ。現役時代、カープもずいぶんと佐々木にしてやられたので、「顔も見たくない」という思いがいつの間にか「大魔神は何度も観た」という記憶にすり替わっていたのだと思う。

 「大魔神」と「ガメラ」は大映特撮映画の2枚看板だが、「大魔神」に先立つこと1年前に公開された「大怪獣ガメラ」の出来映えがイマイチだった記憶があって、結局初見となった本作もさして期待をせず観ることにした。ところが本作に限ってはよく出来ていたと思う。功を奏したのはこれが時代劇だったからだ。

 監督の安田公義はこの「大魔神」までに数多くの時代劇をとったベテランで、なによりドラマ部分の演出が実に手堅かった。

 戦国時代。丹波の国の領主花房家は、ある日家老の大館佐馬之助(五味龍太郎)の下克上によって滅ぼされてしまう。しかし忠臣小源太(藤巻潤)の機転で世継ぎの忠文とその妹小笹は難を逃れ、魔人が眠るとされる山に身を隠すことになった。
 そして10年の歳月が過ぎ、18歳となったた忠文(青山良彦)は小源太とともに佐馬之助を討とうとするが失敗。そこで小笹(高田美和)は魔人の力を借りようと、自らの命を差し出そうとする…。

 84分の本編で大魔神が登場するのは60分を過ぎてからだが、最後の切り札が仮に「水戸黄門の印籠」でも、あるいは「遠山の金さんの桜吹雪」でも成立するところが、全体を“手堅い”と評価出来る点である。
 
そしてそれ以上の出来映えだったのが、大魔神登場後の特撮部分だ。
 まずブルーバック合成のクオリティがかなり高く、城下に立つ大魔神の姿は今観てもまったく見劣りすることが無い。さらにリアリティをもたせたのは美術部の仕事である。大魔神が壊す火の見櫓や城の砦などが実に良く出来ていて、中でも崩れて行く瓦屋根には目を見張った。特撮映画のクオリティを左右するのは、ミニチュアを制作する美術部の力が大きいのだ。


 ドラマとして意表を突かれたのは、仕事を終えた大魔神の末路。
 もしも山まで歩いて帰って、元に位置に収まるのだとしたら相当カッコ悪いなと思いながら観ていたのだけれど、穏やかな顔の土偶に戻ったあと、土塊になって風に消えてしまったのには驚いた。この潔さ、今の映画人も見習った方がいい。
 ホンモノの大魔神は残り2本とも観てみたくなった。

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  • 出版社/メーカー: 角川映画
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コメント 4

うつマモル

はじめまして。アレレ!一番乗りですか。私では役不足ですが宜しくお願い致します。(^-^)
by うつマモル (2011-05-16 23:22) 

ken

はじめまして。こちらこそよろしくお願いします!
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-05-16 23:39) 

きさ

これはいいですね。大映時代劇の底力。
大魔神の登場までひっぱりますが、見せますね。
ラスト、大魔神は全てを破壊しようとするのですが、高田美和の涙で消えていくのではなかったですか?
2作目と3作目も悪くなかったです。
大魔神の登場はもうちょっと早いですが。
by きさ (2011-05-17 05:23) 

ken

高田美和の懇願によって、人相を変え、土になりますね。
それにしてもさすがに2作目以降、大魔神の登場が早くなるんですねw
それがいいと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-05-17 23:34) 

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