サンダーアーム/龍兄虎弟(1986年・香港) [2011年 レビュー]
原題:龍兄虎弟/THE ARMOUR OF GOD 監督:ジャッキー・チェン
これは永年「プロジェクトA」に次いでおもしろい作品と認識していたのだけれど、今日観てみたら意外とそうでもなくて驚いた。なんとまあ序盤30分のつまらないこと。
ジャッキー(ジャッキー・チェン)は“アジアの鷹”と呼ばれるトレジャーハンター。そんなジャッキーをある邪教集団が利用しようとしていた。その教団は数千年前に四散した6つの秘宝を集めていたが遅々として進まず、そこでアジアの鷹に仕事をさせようと企んでいたのだ。そのために教団はジャッキーの親友で香港の大スター、アラン(アラン・タム)の恋人ローレライ(ロサムンド・クァン)を誘拐。ローレライはかつてジャッキーも好意を寄せていた女性だった…。
と、まあ大筋そのものがヘンテコなので、そもそも状況説明に時間がかかる。序盤30分が退屈なのはそのせいだ。そしてもっと肝心なのは、ジャッキーのまともなカンフーを観られるのが、開始から1時間15分過ぎであること。これはもう脱ぎそうで脱がないストリッパー並みのタチの悪さである。
カンフーは観られないけれどアクションシーンはある。
オープニングはジャッキーが頭蓋骨骨折の重傷を負った曰く付きのシークエンスで(事故の模様はエンドロールで一部観ることが出来る)、「インディ・ジョーンズ」シリーズの影響をモロに受けたと思われる本編の“つかみ”である。
また中盤には見応えあるカーアクションが用意されているが、やっぱり僕はジャッキーのカンフーが観たかった。だから1時間15分近くは本当にモヤモヤする。
そのモヤモヤが我慢出来なくなった頃、客の顔色を伺っていたストリッパーが着物に手をかけるように、ジャッキーがファイティングポーズを取る。そりゃもう鼻血ブーである。しかもシーンとしては短いけれど、これがまたよく出来た“演武”なのだ。「スピード感のあるカンフーの美しい型」はジャッキー・チェンによって創造され、世界中のアクション監督にに多大な影響を与えたのだと思う。
冷静に見れば、ジャッキーのアクション・コーディネーターとしての才能は、「プロジェクトA」(1984年)の成功をきっかけに、「ポリス・ストーリー/香港国際警察」(1985年)、「サンダーアーム」(1986年)と80年代中盤から開花して行ったように思う。そしてジャッキーは一部マニアに好まれる「カンフー映画」を作るのではなく、あらゆる人種、あらゆる世代に受け入れられる「アクション映画」を作る方向にシフトしたのだ。
だから本作は1時間15分も本格的なカンフーシーンが無いのだろう。ようやく意味が分かって来た。
この作品ではジャッキーの何気ないセンスを見ることが出来る。
主人公のジャッキーは常にガムを噛む設定になっていて、ガムを口に入れる方法もいちいちこだわって撮っている。とんねるずのノリさんが一時得意としていた手のひらで弾く方法や、壁にぶつけて口に入れる方法など、これは子どもの間で話題になることを狙ったアイディアだろう。ジャッキーのぬかりない攻めの姿勢に感心する。
いい意味でジャッキーにとってターニングポイントとなった1本。
サンダーアーム/龍兄虎弟 デジタル・リマスター版 [DVD]
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- メディア: DVD
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