処刑人(1999年・アメリカ) [2011年 レビュー]
原題:THE BOONDOCK SAINTS 監督・脚本:トロイ・ダフィー
大してヒットしなかったはずなのに、タイトルは意外と知れ渡っていた本作。
10年後に続編も作られたということで、先日wowowで放送されたのを機に観てみた。
原題は「路地裏の聖人たち」。
神の啓示を受けた兄弟が、法では裁けない悪人どもを“私刑”にするという、フィクションの世界ではよく用いられる題材。例えば僕が大好きなマンガ「ワイルド7」(望月三起也原作)も、根っからの悪人を裁くのに国民の税金を使うのは無駄と、“超法規的措置”を取る警察組織の物語だ(これ、今こそ映画化してもらえないだろうか)。
この「処刑人」という邦題は多くの女性客を逃がしたことだろう。と残念に思うのは、主人公の2人が男も惚れるイケメンだったからだ。どっちが兄でどっちが弟なのか、最後まで分からなかったけれど、ショーン・パトリック・フラナリーとノーマン・リーダスの2人は相当イイ。しかもクライム・アクションでありながら決してダーク過ぎず、ときどきライトなガイ・リッチーやタランティーノ風味なのもイイ。ただ、いちいち「惜しい!」ところがあったのも事実である。
「極悪人は法を無視して殺してもいい」はあくまでも不文律である。
そのためには万人を納得させる行動をとらなくてはならない。神の啓示を受けて「路地裏の聖人」(またの名を「処刑人」)となったマクマナス兄弟は、途中イタリアン・マフィアの運び屋をしていたロッコ(デヴィッド・デラ・ロッコ)を仲間に入れるが、この男が何の罪も無いバーテンを勢いで殺してしまうシーンがある。僕はこの瞬間に「この作品のロジックは崩壊した」と思った。
さらにもうひとつ。これもロッコの仕業だが、癇癪を起こしたロッコが銃を暴発させて、飼い猫を爆死させてしまうのだ。これはブラック・ジョークのつもりかも知れないけれど、犬派の僕でも「これはないな」と呆れてしまった。
分からないことは他にも多々ある。
まず神の啓示を受けるシーンが唐突すぎる。兄弟同時に夢を見て、「路地裏の聖人」として行動するようになるまで、いろんなことを端折り過ぎているのだ。
またイタリアン・マフィアのパパ・ジョーがロッコを殺すために用意した史上最強の殺人鬼エル・ドゥーチェ(ビリー・コノリー)が、後半マクマナス兄弟と行動を共にする理由も不明だ。
惜しい。ただセンスはいい。
10年後に作られた続編で、同じ不満を抱かずに済むかどうか確認したい。
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