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クレイジーハニー [ショウより素敵な商売はない]

作・演出:本谷有希子 @PARCO劇場

 2006年秋からの4年半、平日夜は基本的に仕事で塞がっていた。だから観劇はほとんど出来なかったのだけれど、この春“その仕事”を卒業したので、最近はちょいちょい芝居を観ている。
 まずは6月29日、田口トモロヲさんの芝居が久々観たくて、青山円形劇場プロデュース「CLOUD−クラウド−」へ。構成・演出は鈴木勝秀。トモロヲさんの他に鈴木浩介、粟根まこと、山岸門人、伊藤ヨタロウの5人芝居。“現代社会のコミュニケーション”を考えさせられる芝居で、初めて観た粟根まことさんの演技力に心を鷲掴みにされた。玄人の芝居だけにアドリブも巧くてかなり楽しめた。

 続いて7月1日に江本純子主宰の毛皮族。
 「毛皮族の軽演劇2011/滑稽を好みて人を笑わすことを業とす」@リトルモア地下。
 4本の芝居を日替わりで見せる企画で、僕はタイトルにやられて「ボディコン強盗」を観た。
 リトルモア地下がエアコンの効きの悪い狭い小屋で、パイプ椅子にははなからウチワが置いてあった。こうやって芝居を観るのはいつ以来か、記憶にない(笑)。
 「ボディコン強盗募集」という張り紙を観たオタク系アラフォー女子が、飛び込みで面接を受けに来る、というこの設定だけで、最後まで観る気にさせる芝居。テレビじゃゼッタイに出来ない、ボディコンのお姉さんが客に向けてお股をおっぴろげながら喋りまくる、というくだらない演出もあって全体的に面白かった。町田マリーにちょっと惚れる(笑)。

 そして長澤まさみとリリー・フランキーの初舞台。それが本谷有希子の芝居と聞いて興奮しない人はいないんじゃないか(いるよ)。本谷の新作で、ナマの長澤まさみが観られて、リリーさんも初舞台となれば、これは行かねばならぬ。幸運にも知人がチケットを手配してくれたので、8月27日に雨のPARCO劇場へ。
 まず驚いたのが長澤まさみのスタイルの良さ。こんなに手足が長くてモデル体型だとは思わなかった。テレビや映画だとどうしてもアップに行きたがるけれど(だってアイドルだし)、そのボディをトリミングしてしまうのは惜しい。これを機会にどんどん舞台に出て欲しい。まさか舞台でこんなに映える女優だなんて想像もしなかった。
 長澤まさみが演じるのは、10代でケータイ小説でデビューし一時は人気を集めるものの、その後鳴かず飛ばずの作家、ひろみ結城。
 リリーさんが演じるのはひろみの連れで、オカマの真貴。ひろみはときどき真貴と2人でトークショーを開催しては、数少ないファンとの交流をしていた。そこに編集者から手紙が来て、ファンを交えた座談会を本にしようと持ちかけられる…という設定。
 とにかく長澤まさみの“振り切り方”がスゴかった。
 約2時間半の芝居の中で何度も声を張り上げる場面があって、それはそれは喉を潰さないかと心配になるほどだったし、ドラマや映画ではゼッタイに見せない、女のダークな部分をそれはそれは気持ち良く演じていた。
 一方で本谷有希子のズル賢さも垣間見た。長澤まさみは全編ミニスカートだったのだ。
 本谷有希子は長澤まさみを使って女の嫌な部分をこれでもかと見せておきながら、「でも全部までは嫌いにはなれないでしょ?」と、長澤まさみの真白な足を指差し、ニヤリとしながら観客の耳元で囁くのだ。まるで女郎屋の女将みたいに。長澤まさみのミニスカートは、本谷の計算ずくの演出だったと思う。美しいナマ足を見せつけられて、その女がどれほどダメな女でも、全否定出来る男はいない。
 「女の武器は使えるものなら何でも使う」
 最近ちょっとキレイになった本谷有希子と共通するようで、なんと潔い芝居だろうと感心してしまった。

 リリーさんも初舞台とは思えないほど巧かった。
 けれどリリーさんにオカマ役を当てたのが勝因だったと思う。つまりフツーの芝居でなくていいのだ。リリーさんが実年齢に近い男性役だったら、ここまで巧く見せられたかどうかは分からない。これも本谷有希子の設定勝ちと言うべきだろう。それにしてもリリーさんの緩急付けた芝居は良かった。この人の舞台ももっともっと観てみたい。

 この作品、実は出演者の多い芝居で(本谷作品の中で最多だそうだ)総勢15名による。
 ひろみ結城のファンという設定の役者11名のうち10名はオーディション&ワークショップによって選ばれた人たちで、彼らの強烈な個性も芝居の見どころのひとつになっている。個人的には鉢嶺杏奈がえれー可愛くて気に入った。

 舞台を観るたびに思うのは、役者が“全身で演じる姿”を観る喜びである。
 僕は長澤まさみを堪能しながら、改めてそう思った。

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movielover

観劇、あまりしたことないですが、妹が劇団キャラメルボックスなんかにはまっていて、ライブの楽しさを何度も語られていました(笑)。
長澤まさみ×リリーフランキーはきっと男心そそりますよね??
本谷有希子もずるい!!
そして長澤まさみのスタイルもずるい!!
演劇ってその人間の精一杯のすべてがそこで出てしまうからすごい、って思っちゃいそうな気もします。
映画とはまた違う世界ですね。
by movielover (2011-08-29 00:57) 

ken

映画とは全然違いますね。
なんといってもライブですから、演じたら終わり。観たら終わり。
その生々しさがいいんですよね。舞台だから扱える素材とかもあるし。
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-08-29 13:19) 

CORO

そう言えば長澤まさみは東宝シンデレラのクランプリ受賞時に、
骨格がよかった…みたいなことを言われてましたね^^
私は映画作品の原作者としての本谷有希子しか知りませんが、
女性の嫌らしさがよく出ていて、ニヤリとしてしまいます。
by CORO (2011-08-29 23:14) 

ken

僕はこの舞台を観て、本谷ファンになりました。
長澤まさみのナマもまた観たいなあ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-08-30 02:09) 

satoco

長澤まさみ、ずーっと買ってます。芝居いつもうまいんですよ。本人は結構勢いのいい人だけど、精神的にだらしない役とかもすごくしっかりやってました。一時期「芸能界で一番スタイルがいい」って言われてませんでしたっけ。

本作見たいですねー。ライブはなかなか難しいですが....
うらやましいです。
by satoco (2011-08-30 09:21) 

ken

芸能界で一番とは言わないけれど、なかなかボディ・コンシャスですよね。
サイコーに素敵でした。やっぱりナマはいいw
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-08-30 17:01) 

ジャニスカ

これは観たい!(^^)

by ジャニスカ (2011-09-03 12:23) 

ken

昨日、羽田でリリーさんを見かけました。
きっと今日、明日の金沢公演のための移動だったんでしょうね。
残るチャンスは、福岡、大阪、名古屋です!
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-09-03 14:29) 

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