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深く静かに潜航せよ(1958年・アメリカ) [2011年 レビュー]

原題:RUN SILENT, RUN DEEP 監督:ロバート・ワイズ

 本作の3年後に「ウエスト・サイド物語」を、6年後に「サウンド・オブ・ミュージック」を撮り、両作品でアカデミー監督賞を2度受賞するロバート・ワイズ監督の潜水艦映画。モノクロ作品。

 映画の前に少しだけ潜水艦の歴史をおさらいしてみようと思う。
 「wiki」によると、“潜航可能な軍艦”の構想は16世紀からあったようだが、近代潜水艦が登場したのは1900年。アメリカ海軍が7人乗りの潜水艦ホランドを正式採用したことで、世界各国で潜水艦が注目されるようになる。
 戦時下で最初に結果を出したのはドイツ海軍のUボート。第1次世界大戦時には約300隻が建造され、イギリス海軍の軍艦や商船を次々と撃沈。イギリス経済に大打撃を与えたと言われている。
 そしてUボートの活躍によって、列強国の海軍が多数の潜水艦を保有することになった。

 となるとついでに気になるのが「潜水艦映画」の歴史。
 映画データベースの「allcinema」によると、タイトルに「潜水艦」と付く映画は、洋画・邦画合わせて24本(このうち2本は日本のアニメーション)。その中で最も古い作品は1937年にアメリカで製作された「潜水艦D1号」と「潜水艦SOS」の2本だった。タイトルに「潜水艦」と無くても、これ以前に潜水艦映画が無かったかも調べたけれど、恐らくこの2本が最古の潜水艦映画だと思われる。
 さて、過去の潜水艦映画にまで目を配った理由は、「潜水艦映画の古典的プロットはいつ出来上がったのか」に興味があったからだ。それによって本作「深く静かに潜航せよ」の評価は大きく変わると思う。というのも本作のプロットが潜水艦映画の王道を行くものだったからだ。

 まず「艦長と副長の対立」
 本作では、潜水艦ナーカ号の艦長に就任したリチャードソン中佐(クラーク・ゲーブル)と、ナーカ号の次期艦長間違いなしと言われていた副長・ブレッドソー(バート・ランカスター)の対立が描かれる。
 ナーカ号は前艦長が負傷で艦を降りることになり、いよいよブレッドソー副長が艦長昇進かと部下がウワサしていた矢先に、リチャードソン中佐が艦長として“スライド就任”して来たのだった…。

 そして「外界と限られた接触しかない特殊な環境」
 乗組員たちにとって艦内は職場であり、生活の場であり、戦場でもある。いくつもの側面を持つ狭い空間では、人間関係の悪化が艦内の空気を大きく変える。乗組員たちが「帰らざる海」とウワサしていた豊後水道。リチャードソン艦長は部下に配慮して「豊後水道は避ける」と明言しながら、「あきかぜ」への復讐のための厳しい訓練を繰り返す。乗組員は「艦長は豊後水道を目指している」と確信し、やがて司令違反覚悟で態度を硬化させて行く。孤立する艦長。その間に立つ副長。どこにも逃げ隠れ出来ない環境で、次第に空気は張りつめて行く…。

 もうひとつ「見えない敵との頭脳戦」
 闘いの舞台は日本の豊後水道。「あきかぜ」との対決がドラマの山である。
 ナーカ号は「あきかぜ」の執拗な機雷攻撃によって損傷。艦長は沈没を装うため、日用品の他に、戦死した乗組員の遺体まで魚雷管に入れて発射、海面に浮上させる。おかげで「あきかぜ」の目を欺くことに成功するが、本当の敵がナーカ号に迫ろうとしていた…。

 作品としては、脚本に若干言葉足らずなところがあって、伝わり難い点がいくつかある。
 一番は副長の心理描写がいささか乱暴で、もっと丁寧に副長の思いを表現していたら、ドラマとしての質は上がったんじゃないかと思う。なによりビジュアル的にキツいクラーク・ゲーブルよりも、若々しいバート・ランカスターに感情移入させるのが最善だと思うのだが…。

 仮にこれが潜水艦映画の古典的プロットを完成させた作品なのだとしたら、歴史的評価は高くてもいいと思う。というわけで、これ以前の潜水艦映画も観てみたくなった。
 それにしても「深く静かに潜航せよ」とは素晴らしい意訳。昔の映画会社には文学的センスに溢れる人がいたことを教えてくれる名邦題。

深く静かに潜航せよ [DVD]

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