ドラゴン・タトゥーの女(2011年・アメリカ) [2012年 レビュー]
原題:THE GIRL WITH THE DRAGON TATOO
監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:スティーブン・ザイリアン
アカデミー賞授賞式を観ていたら、ふと観たくなって劇場へ。
書店で原作が平積みになっているのは知っていた。書店によっては映画の予告編を流してまで原作のPRをしているところまであった。でも「まずは観たい」という欲求に抗えなかった。
ところが。
本作は「原作を読んでいない観客に優しくない」映画だった。残念だ。
スウェーデンの社会派雑誌「ミレニアム」の記者ミカエル・ブルムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)は、国内有数の企業グループの元会長ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)から、40年前の失踪事件の捜査を依頼される。ある事情から引き受けたミカエルだったが、人手不足もあり捜査は途中暗礁に乗り上げる。そこでミカエルは一人のリサーチャーを雇うことに。彼女の名はリスペット・サランデル(ルーニー・マーラ)。ヴァンゲルがミカエルの身辺調査をさせたリサーチャーだった…。
「観客に優しくない」一番の理由は、登場人物が複雑に入り組んでいるからだ。
だから原作は面白いはずなのだが、映画は自分で時間をコントロール出来ないために、一旦乗り遅れるとそのままついて行けなくなる。正直言って僕にこの映画は速かった。そんなに勉強が出来るわけじゃないのに、進学校のさらに進学クラスの授業に出ているみたいだった。
僕はリスペットが捜査に加わる前にすでに脱落していたと思う。僕がこの作品について行けなくなったのは、「名前を聞いても、顔を思い浮かべられない」事態に陥ったからだ。
推理モノはとかく「証言」で構成されがちである。だから顔と名前が一致しない事態は致命傷に等しい。少なくとも記憶力が怪しくなって来た僕には不向きな作品だったと言わざるを得ない。もちろん原作を読み、登場人物全員のプロフィールがインプットされれば、その限りではない。
謎解きにはついて行けなかったけれど、ストーリーの構造については感心することが多かった。
まず縦軸が2段積みだったこと。
「40年前の失踪事件の謎解き」という縦軸を、ミカエル自身が追いかけていた「事件」でサンドイッチしているのだ。この構造は面白いと思った。本題の謎解きが終わったあとに、もうひと山作る発想は僕には無かった。
横軸とのバランスもいい。
横軸と言いながら、実はタイトルロールの物語である。ドラゴン・タトゥーの女リスペットが蔑まされ、立ち直り、そしてまた“自分の殻”に帰って行く様。この横軸がドラマに緊張感を与えている。ミカエルとリスペットの時間がなかなか交差しないところも新鮮だった。
だから未見の人にアドバイスする。
「原作を読んでから観た方が100倍おもしろい」
それにしても記憶力ってやつは。
やれやれ。
監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:スティーブン・ザイリアン
アカデミー賞授賞式を観ていたら、ふと観たくなって劇場へ。
書店で原作が平積みになっているのは知っていた。書店によっては映画の予告編を流してまで原作のPRをしているところまであった。でも「まずは観たい」という欲求に抗えなかった。
ところが。
本作は「原作を読んでいない観客に優しくない」映画だった。残念だ。
スウェーデンの社会派雑誌「ミレニアム」の記者ミカエル・ブルムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)は、国内有数の企業グループの元会長ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)から、40年前の失踪事件の捜査を依頼される。ある事情から引き受けたミカエルだったが、人手不足もあり捜査は途中暗礁に乗り上げる。そこでミカエルは一人のリサーチャーを雇うことに。彼女の名はリスペット・サランデル(ルーニー・マーラ)。ヴァンゲルがミカエルの身辺調査をさせたリサーチャーだった…。
「観客に優しくない」一番の理由は、登場人物が複雑に入り組んでいるからだ。
だから原作は面白いはずなのだが、映画は自分で時間をコントロール出来ないために、一旦乗り遅れるとそのままついて行けなくなる。正直言って僕にこの映画は速かった。そんなに勉強が出来るわけじゃないのに、進学校のさらに進学クラスの授業に出ているみたいだった。
僕はリスペットが捜査に加わる前にすでに脱落していたと思う。僕がこの作品について行けなくなったのは、「名前を聞いても、顔を思い浮かべられない」事態に陥ったからだ。
推理モノはとかく「証言」で構成されがちである。だから顔と名前が一致しない事態は致命傷に等しい。少なくとも記憶力が怪しくなって来た僕には不向きな作品だったと言わざるを得ない。もちろん原作を読み、登場人物全員のプロフィールがインプットされれば、その限りではない。
謎解きにはついて行けなかったけれど、ストーリーの構造については感心することが多かった。
まず縦軸が2段積みだったこと。
「40年前の失踪事件の謎解き」という縦軸を、ミカエル自身が追いかけていた「事件」でサンドイッチしているのだ。この構造は面白いと思った。本題の謎解きが終わったあとに、もうひと山作る発想は僕には無かった。
横軸とのバランスもいい。
横軸と言いながら、実はタイトルロールの物語である。ドラゴン・タトゥーの女リスペットが蔑まされ、立ち直り、そしてまた“自分の殻”に帰って行く様。この横軸がドラマに緊張感を与えている。ミカエルとリスペットの時間がなかなか交差しないところも新鮮だった。
だから未見の人にアドバイスする。
「原作を読んでから観た方が100倍おもしろい」
それにしても記憶力ってやつは。
やれやれ。
kenさん、
これはきっと、スウェーデン版を観たほうが、解りよいと思います。あちらがなかったら、今作はわたしもこんがらがったはず。スウェーデンのオリジナルは公開版と完全版(上下3時間)もあるらしく、どうせなら完全版をおススめします(わたしも観る予定です)。
それに、どちらが好きかっていえば、やっぱりオリジナルがよかったです。フィンチャーらしいオリジナルを入れたことによって、「そんなんじゃなかった」って感じてしまうところもあったし。
ぜひ、観比べてみてくださいね^^
by クリス (2012-03-02 17:31)
ははー、完全版なんてあるんですね。俄然観てみたくなりました。
ハリウッド版の主演2人は気に入ってるんですけどねえ。
wowowで流してくれないかなあw
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-03-02 21:08)
面白かったです。
原作を読んでないですし、スウェーデン版の映画も見ていないので全く予備知識なしで見たのですが、楽しめました。
ルーニー・マーラ演じる天才ハッカーのヒロイン”ドラゴン・タトゥーの女”リスベットがとても良かったです。
ルーニー・マーラ、「ソーシャル・ネットワーク」では出番は短かったですが、結構印象に残っています。
横溝正史の犬神家みたいな一族の関係は分かりにくいですが、さすがフィンチャー監督うまく処理していたと思います。
映画がとても面白かったので、この後がとても気になりました。
特にリスベットがどうなるのか。
なので、原作を読んでみようと思っています。
by きさ (2012-03-03 09:26)
やっぱり記憶力だなあ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-03-03 09:41)
こんばんは。
私も原作未見で同じ感想でした。特にロンドン娘。のくだりが名前で言いあっていたので途中で見失いました。
ただ回りに原作読みがたくさんいたので鑑賞後いろいろ解説してもらい、じわじわとわかってきました。
鑑賞中に楽しむという面では、やはりkenさんの言うように原作を読んでからのほうがよいかもしれませんネ。
by コザック (2012-03-04 03:14)
コザックさん、お久しぶりです。
ロンドン娘、そうですよねえ。あそこで僕も「あ、やばい」と思いました。
これ、正しくは「原作を読んでいない日本人に優しくない映画」ですね。
日本人の名前なら、そこそこ行けた気がしますw
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-03-04 09:36)
最近スウェーデン版を見ましたが素晴らしく面白かったです。人物に関しては顔写真を多用し親切でした。
ダニエル・クレイグのファンなのでハリウッド版にも期待しています。
久々に面白い推理小説二出会えて興奮しました。
by satoco (2012-05-20 00:40)
ああ、satocoさんまで…そうですかw
これは観ないわけにいきませんね。
by ken (2012-05-21 23:37)