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メランコリア(2011年・デンマーク/スウェーデン/フランス/ドイツ) [2012年 レビュー]

原題:MELANCHOLIA
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー

 知人の映画プロデューサーから「おもしろいから観て」と言われて観てみる。
 「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の監督の新作で、昨年のカンヌでパルム・ドールにノミネートされた作品でもあります(カンヌでは余計な発言をして、面倒なことになってたけど)。
 確かにおもしろい映画でした。
 もう何年もやっていないけれど「ゆる会」のお題にしたかったなと思うくらい。それほど観賞後に皆でじっくりと話したくなった映画です。

 「メランコリアという惑星が地球に衝突する」
 これがまずプロローグで明らかになります。
 衝突してどうなるのかというと、地球は宇宙の塵となります。ものの見事に。
 これが結末。本作はプロローグで結末を明かした後、いよいよ本編がスタートするという、とんでもない仕掛けになっているのです。ネタバレもへったくれもありません。
 ではこんなドラマの主人公は誰か。
 ウィル・スミス?…いえいえ。ブルース・ウィリス?…ノンノン。クリント・イーストウッド?…もういいでしょ(笑)。
 そもそも男じゃありません。キルスティン・ダンストとシャルロット・ゲンズブールの2人です。
 彼女たちが演じるのはジャスティンとクレアという姉妹。本編は2部構成になっていて、第1部はジャスティン(キルスティン・ダンスト)の結婚披露宴で起きる様々なドラマが描かれます。
 
 ジャスティンと新郎のマイケルは、姉クレア(シャルロット・ゲンズブール)の夫ジョン(キーファー・サザーランド)が準備してくれた披露パーティに2時間遅れで到着する。そこには離婚した両親、会社の上司ほか大勢の人たちが集まっていた。
 スタートこそ遅れたものの披露宴は賑やかにスタートするが、母ギャビー(シャーロット・ランプリング)の嫌みに満ちたスピーチを境に、ジャスティンは情緒不安定になっていく…。
 
 第2部はメランコリアの地球衝突におびえるクレアの日常を描きます。
 
 披露宴以来憔悴しきっていたジャスティンを自宅に呼び、面倒を見ていたクレアも、メランコリアの存在に不安を感じ、情緒不安定になっていく。夫ジョンは「すれ違うだけで衝突はしない」と言うものの、クレアはインターネットで悲観的な情報を目撃してしまう。
 その一方でジャスティンは不思議と平静を取り戻そうとしていた…。

 地球に惑星が衝突するというSFストーリーでありながら、アメリカ軍もNASAも大騒ぎするメディアも民衆も出て来ません。僕はまずこの設定に驚きました(僕たちはハリウッドのディザスター・フィルムに相当感化されているということですね)。
 しかも観客の恐怖心を無闇にあおるシーンがなく、メランコリアについては天体ショーを観るかのような美しい映像が続きます。これは観客に「やっぱり惑星衝突なんて起きない」とミスリードさせる作戦だったのかも知れません。僕は比較的平穏を保ったままクライマックス直前まで導かれた気がします。
 ところが最悪の事態はやって来る。
 ディザスター・フィルムではありませんが、登場人物の何人かはパニックに陥ります。ただし、ここまで来るとトリアーが描きたかったのは「地球の最後」ではない、ということが分かると思います。
 トリアーが惑星衝突をモチーフにしたのは、観客を「究極の死」に追い込みたかったからでしょう。人種も国籍も地位も預金残高も一切関係なく、誰一人逃れられない完全なる死。そこでトリアーは観客に向けて究極のメッセージを発信します。いよいよ衝突は避けられないと悟ったジャスティンとクレア2人の「その瞬間の迎え方」が本作の最大の見どころ。
 それは「分かっているのに衝撃の結末」という、おそらく映画史に残るだろう見事なラストシーンでした。

 この映画のアイディアは、トリアーが鬱病に苦しんでいた頃に出会ったセラピストの言葉から来ているそうです。その言葉とは「鬱病の人々は先に悪いことが起きると予想し、強いプレッシャーの下でもっと冷静に他の者よりも行動する傾向がある」。
 この言葉を胸に刻んで本編を観ると、面白さは何倍にもなると思います。特に第1部。
 僕は見終わったあとに知ったので、今はただ「早くもう一度観たい!」と悶える毎日です(笑)。映画マニアにはゼッタイおすすめ。傑作。

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ルル

こんばんは。

「鬱病の人々は…」この文章を読むと、
映画への興味が沸き、観たくなりますねw
by ルル (2012-03-07 19:56) 

ken

そうなんです。僕もこの一文を知って、俄然もう一度観たくなりました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-03-09 16:28) 

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