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X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006年・アメリカ) [2012年 レビュー]

原題:X-MEN:THE LAST STAND
監督:ブレット・ラトナー
脚本:ザック・ペン、サイモン・キンバーグ

 シリーズ見直しの最終回。
 ブライアン・シンガーが「スーパーマン リターンズ」を撮るため降板し、代わりに起用されたのが「ラッシュアワー」のブレット・ラトナー。映画制作は多くのスタッフによる共同作業だが、ブライアンがいなくなっただけで作品のクオリティがここまで下がるのだから、本作は監督の存在がいかに大きいかを教えてくれる好例だ。
 シリーズのプロデューサーを務めたアヴィ・アラッド、ローレン・シュラー・ドナーたちにとってブライアンを逃がした事実は、出資者に言い訳の出来ない最大の失策である。…とまあスタッフィングのミス云々については前回のレビューで書くだけ書いたのでここまでにして、今回はきちんと内容について掘り下げてみる。

 時は20年前。チャールズ(プロフェッサーX)はエリック(マグニートー)を伴って一人の少女に逢いに来た。少女の名前はジーン・グレイ。見事な念動力を持つジーンは、しかし家族からは「病気」と言われて育っていた。チャールズはジーンの才能を評価し「恵まれし子らの学園」へと誘う。
 その10年後。とある大企業の社長ワージントンは息子の異変に気付く。思春期を迎えた息子の背中に羽根が生えたのだ。ワージントンは息子を普通の子どもに戻そうと、ある計画をスタートさせる。それがミュータント治療薬「キュア」の製造だった。
 そして現在。「キュア」が完成しミュータントたちは「人間になるか、ミュータントのままでいるか」という究極の選択を迫られる。

 まず冒頭で驚いたことは、20年前のチャールズが立って歩いていたこと。
 「ファースト・ジェネレーション」ではジェームズ・マカヴォイ演じるチャールズが半身不随になるいきさつを描いているのだから、これでブライアン・シンガーは自分が関わらなかった本作を「無かったもの」としたことが判明したわけだ(笑)。
 で、もうひとつ気になったのは、なぜ前作で死亡したジーンのエピソードを冒頭に配置したのかと言うこと。これはあとで「ジーンは死んでいなかった」という反則ワザを繰り出すための前フリなのだが、とにかく本作のプロットはファンとして納得のいかないことが多すぎるのだ。
 一番残念だったのは、シリーズを代表するキャラクターであるミスティークをあっけなく「キュア」の犠牲にしたこと。早いハナシがミスティークは途中でフツーの女子になってしまうのだ。その扱いもぞんざいでミスティークに対する愛情の欠片も感じられなかった。
 さらに驚いたのはプロフェッサーXを殺してしまったことだ。
 いや、これも「劇的なストーリーを構築するためにはこれしかない」という作り手の“覚悟”が見えればいい。ところがそんなものもは皆無である。その証しにエンドクレジットを最後まで観た人は知っているが、正真正銘のラストカットでチャールズの復活を匂わせるシーンを加えているのである。ということはプロフェッサーは、ただ観客を驚かせるために一旦殺されただけなのだ。なんという安直なプロットだろう。
 理解出来ないこともある。
 3作目の対立軸は基本「キュア」v.s.ミュータントである。そして「キュア」をきっかけにX-MENとブラザーフッドの対立もより激しくなる。
 さて問題はここだ。
 X-MENとブラザー・フッドは「人間との共存を望む、望まない」という理念の違いによって2極化したミュータントの集団である。マグニートー率いるブラザーフッドが「ミュータントを病人扱いし、その個性を無にしようとする人間に対して反乱を起こす」というロジックは納得出来る。しかしブラザーフッドとX-MENが戦う理由はまったく分からない。いくらX-MENが人間との共存を望んでも、人間は「キュア」を手に入れ、ミュータントを根絶しようとしているのだ。
 「では、X-MENは何を賭けてブラザーフッドと戦っているのか?」
 これが本作最大の謎にして、最大の矛盾であり、本作をワケの分からないものにしてしまった元凶である。
 
 ついでに理解出来なかった点をもうひとつ。
 「キュア」開発の源となったミュータントの少年リーチ。まるで「AKIRA」のタカシやキヨコが軟禁されていたような部屋にいた、この少年の意味は?まったく刈り取れていない気がしたのは僕だけか。僕がバカなのか?(笑)。

 久しぶりに観て驚いたこともあった。
 X-MENの新規メンバーに「juno/ジュノ」の主人公を演じたエレン・ペイジがいたこと。「juno」に出演する1年前だが、すでに不思議な魅力を湛えるキュートなミュータントを演じていて存在感はバツグン。

 シリーズ見直しはこれで終了。
 結論。「ファイナル ディシジョン」はブライアンにリメイクして欲しい。以上。

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コメント 4

怪しい探麺隊

復活したジーンにアッサリ殺されたサイクロップスがあまりに不憫ですよね....(一応、X-MENのリーダーなのに....)
アメコミは、作者と作品が厳密に結びついていなくて、次々とヒトが代わりながら書き継ぐスタイルらしく、死んだはずが復活したり(よくあるパターンが宇宙生物との合体による復活でキャラも変わっちゃう)、裏切ったり敵方に付いたりが当たり前のように繰り返されるらしいですね。
(コミックの方のスパイダーマンのグウェン・ステイシーも、原作者休暇中に殺されちゃって、妻にするつもりだったのに…と狼狽えたとか....)

ジーンが復活してフェニックスと名乗り別キャラになっちゃうのは、原作から来ているエピソードのようです。
作り手が変わって、辻褄が合わなくなるところまでアメコミに忠実にやってもらう必要はないんですけどねぇ...

by 怪しい探麺隊 (2012-06-24 23:49) 

ken

サイクロップスはブライアンに連れてかれて「スーパーマン リターンズ」に出ちゃったんですよね。だから物理的に出番が少なくなったと聞きました。
フェニックスの件は知ってたんですけど、登場させる必然性をプロットに感じなかった。それが一番残念でした。
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-06-26 00:54) 

怪しい探麺隊

そうですか、スーパーマン・リターンズにね...なるほど。(あまり印象無いなぁ...)
彼の「魔法にかけられて」の王子様の似合いっぷりは捧腹絶倒でしたが、以来あまり見かけない....

by 怪しい探麺隊 (2012-06-26 02:29) 

ken

彼は目が“弱い”ですからねえ。
by ken (2012-06-29 00:07) 

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