東京キッド(1950年・日本) [2012年 レビュー]
監督:斎藤寅次郎
脚本:伏見晁
「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本〜喜劇編〜」の1本。
この映画の存在は昔から知っていたけど、これが喜劇と知ったのは今回の企画にチョイスされてから。美空ひばり13歳のときの主演映画がどんなコメディなんだろうと思って観てみることに。
母子家庭で育ったマリ子(美空ひばり)の元へ、「死んだ」と聞かされていた父・浩一(花菱アチャコ)が突然現れる。浩一はビジネスのために妻とマリ子を置いてアメリカに渡っていたが、今は成功し一時帰国していた。マリ子は困惑するが、まもなく母親が病死してしまう。浩一はマリ子を引き取りたい一心だったが、マリ子は浩一に馴染めず家出をしてしまう…。
この作品が作られたとき美空ひばりは13歳だったのだけれど、前年(1949年)に作られた映画「悲しき口笛」が大ヒットし(同主題歌も45万枚の大ヒット)、ひばりはすでに国民的スターだった。そのためか出演しているメンツがスゴい。
ひばりの脇を固めるのは、花菱アチャコ、榎本健一、堺俊二と日本お笑い界の一時代を担った人たち。言うなれば万全の布陣で臨んだ1本というところだろう。コメディ映画としての完成度を62年後の今語るのは難しいが、この3人については三人三様の味を出していたと思う。特に榎本健一が演じたインチキ占い師は「唄が流れると無意識のうちに踊りだしてしまう」というトリッキーな設定なのだが、これをエノケンが見事に自分のものにしていて、今も笑えるところがスゴかった。
1点驚いたのはマリ子の夢のシーンでハワイロケが行われていること。
山本晋也カントクによると「戦後初の海外ロケだった」らしいのだが、なんともゼイタクな作りである。
美空ひばり。
多く人が「天才」という言葉を軽々しく使うせいで、本作では見劣りしたように思う。歌の表現力には舌を巻くが、劇中の歌はすべてがレコード音源であり、芝居は正直論外。器用とは言えるが映画から彼女の天才ぶりを見出すのは難しい。
劇中、マリ子を流しの歌手として売り出すギター弾きの三平を演じているのが、美空ひばり育ての親・川田晴久であることは後から知った。
まだわずか13歳の少女に、当時日本国民が寄せた期待は如何ほどのものだったのか。想像しながら観るのもいいだろう。昭和を彩る歌謡映画の典型。
こんばんは。
美空ひばりがわずか13歳の時の映画なんですね。それが大ヒットしたんですから、やはりひばりさんはすごい人ですね。
脇役の天才3人花菱アチャコ、榎本健一、堺俊二の芸は、映像でしかみたことがありませんが、この3人の演技を観るだけでも価値があるし、おもしろいでしょうね。いつか観てみたいです。
by coco030705 (2012-10-24 23:44)
日本人はまだ小さかった美空ひばりに夢を託したかったんでしょうね。
そんなことを想像しながら観ると、印象も変わるかも知れません。
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-10-25 16:24)