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ブロークン・フラワーズ [2006年 ベスト20]

ブロークン・フラワーズ」(2005年・アメリカ) 監督・脚本:ジム・ジャームッシュ

 この映画は「観るなら独りで」と決めていました。
 だってそういう映画だから。
 
 そして申し訳ないんですけど、この作品は
 
「19歳の息子がいてもおかしくない中年の独身男が一番楽しめて一番泣ける映画」
 です。
 だから僕は面白かった。
 でも僕がビル・マーレイの年齢(56歳)だったら泣いていたと思います。多分、笑いながら。

 まず、そのビル・マーレイが抜群の演技を見せてます。上映時間の106分間は完全に「ビル・マーレイ ショウ」。
 口を開かずとも雄弁な表情と身のこなしは、素人に有無を言わせない圧倒的な存在感を放ち、彼のおかげで脚本以上のドラマに仕上がったと言っていい。
 本作の楽しみどころはいくつもありますが、その1はビル・マーレイ演じる「ドン・ジョンストンが今、心の奥で何を考えているかを探ること」です。
 “19歳の息子がいてもおかしくない中年の独身男”にとっては、実はそれが自らの心の声だったりするんですけど。

 もちろんジム・ジャームッシュの脚本も秀逸。と言うより登場人物のキャラクター作りがこの人は本当に巧い。
 過去の恋人探しをするようドンに勧める“隣人のウィンストン(しかも子沢山)”というキャラを思いついた段階でジャームッシュの勝ち(笑)。ドンとウィンストンが絡むシーンは今思い出しても笑えます。
 そして楽しみどころその2は、やはりドンが訪ねるかつての恋人たちのキャラクター設定。
 次々と現れる女性たち(女優も見どころ)を観ながら僕は、「コイツどんなボールでもキレイに受けちゃう好捕手みたいなヤツだな」と思いました。と、同時にドンがどういう人物だったかが分かってくる。そんな推察も楽しい。
 楽しみどころその3は音楽。ジム・ジャームッシュのセンスが見事なまで炸裂しています。
 僕が一番気に入ったのはエチオピアのアーティスト、ムラトゥ・アスタトゥケの「Yekermo Sew 」。この曲の不協和音がドンの心理と見事にマッチしていて、この曲が流れたシーンで僕は思わず吹き出しそうになりました。

 と、ここまで褒めまくりで来ましたけど、構成に関しては一言あります(笑)。
 かつての恋人を巡る旅は、訪ねて、話して、再び別れる、という展開にならざるを得ません。これは絶対に避けられない。でもこれが淡々と続くのはさすがに飽きました。途中一度でいいから“隣人のウィンストン”とのエピソードを挿入したら良かったのにと思いましたね。
 
 で、女性でご覧になった方。ぜひ感想を聞かせてください(笑)。

ブロークンフラワーズ

ブロークンフラワーズ

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • 発売日: 2006/11/24
  • メディア: DVD

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コメント 13

coco030705

こんばんは。
私も見ました。音楽が気に入って、サントラCDを買ってしまいました。
おもしろい映画でしたね。「隣人のウィンストン」さんのこと、スルーしてましたけど、kenさんの記事を読んだら、そうだなあって思いました。
TBさせていただきます。
by coco030705 (2006-06-02 18:01) 

ken

女性の目線はやはり男性のそれとは決定的に違いますね。
TB記事を読んでそう思いました(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-06-02 18:17) 

んがぴー

こんちは!
ブロークン・フラワーズ私も観ましたー。
ビル・マーレイの演技は本当に自然なんですよね。
役がはまってるって言うより、ビルしか出来ないでしょって感じですね。
ロストイントランスレーションでも、そう思いました。
ビルの哀愁と心の影のような部分が本当に好きでーす。
KENさんの視点は非常に面白いですね。確かに女性がどのような感想をもつのか是非聞いてみたいですね。
ではでは
by んがぴー (2006-06-03 18:34) 

ken

今回のビル・マーレイは、「チャンス」のピーター・セラーズを彷彿とさせました。
この人の芝居は、もう「名人芸」の域に達していますねえ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-06-03 18:48) 

瑠璃子

はーい。私もサントラ買ったです。
面白かったんだけど…構成にある種のあざとさを感じてしまいました。もっとも私がアキ・カウリスマキ映画好きっていうのがあると思いますが。
TBしました。
by 瑠璃子 (2006-06-03 21:39) 

ken

サントラ僕も買います。
アキ・カウリスマキ???一体誰なのか分かりません。
ううう、勉強しておきます。
by ken (2006-06-04 03:34) 

蓮花

待ってました、kenさん!
とうとうご覧になったんですねー。
私の感想はすでにご存じかと思いますが、過去の恋愛に対する女の感情、
というか、思い出の封印の仕方は男のそれと
まったく違うなあと思います。
隣人ウィンストン、後半にも出て欲しかったです。
でもそうすると、ロードムービーの魅力が落ちちゃうのかな・・・。
by 蓮花 (2006-06-04 08:27) 

蓮花

申し遅れました!TBさせてくださいね!
by 蓮花 (2006-06-04 08:28) 

ken

途中に隣人ウィンストンが出てきても何の問題も無かったと思いますね。
ウィンストンが何らかの理由をつけて旅先までやってきたら、
それはそれで相当なおせっかい焼きキャラ爆発!って展開になっていたと
思います(笑)。
by ken (2006-06-05 01:21) 

keiko-nari

すごく楽しみにしていたから、見たい~★
ここを見てますます見たくなりました。
by keiko-nari (2006-06-05 20:31) 

ken

ジミーと二人でどうぞ(笑)。nice!ありがとうございます。
by ken (2006-06-05 23:16) 

kotori

ビルマーレイ、久し振りに見て、年とったなあって思いました。
音楽もよかったし、結構面白かったです。
特に隣人ウィンストンがいいキャラでしたね。
私も彼の選曲のCD作ってもらいたい。
by kotori (2006-06-18 21:49) 

ken

確かに!ウィンストンにCD作ってもらいたいですね~(笑)。
でも無理だからCD買いましょう。
by ken (2006-06-19 00:12) 

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