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薔薇の名前 [2007年 レビュー]

薔薇の名前」(1986年・フランス/イタリア/西ドイツ) 監督:ジャン=ジャック・アノー

 先日観た「ハスラー」と同じく20年近く前に観た作品の再レビューです。
 20年前の記憶で言うとこの作品は「難解だけれど良く出来たミステリー」だったのですが、改めて観たらとんでもない。そんな軽々しくまとめられる作品じゃありませんでした。

 物語の背景のあるのは、大きく言うと“キリスト教とは何か?”ということ。
 具体的には、“喜劇”について論じたとされるアリストテレスの「詩学」第二部の存在や、キリスト教修道院の“清貧論争”がドラマの素材として使われていて、これらを知らずにドラマを理解した気になったら、それはウソ。そんな人は原作者(ウンベルト・エーコ)あるいは映画製作者たちの意図から逸脱したことになると思います。20年前の僕が完全にそうでした(笑)。
 と、いうことは、予備知識を持たないまま観てしまうと、極めて「納得感の低い」作品と言うことになってしまうわけで(それを人は難解と言う)、キリスト教に明るくない人はうかつに手を出さないほうが無難だと思います。

 僕が20年ぶりに観て一番理解できなかったのは、本編のエンディングに出る“言葉”の意味。ちょっとフライング気味ですがここに書いてしまいましょう。
 「バラは神の名付けたる名。我々のバラは名も無きバラ」
 僕はこんなラストだったなんてまったく記憶に無くて、字幕が出た途端、「はぁ?」とフリーズしてしまいました。文字面だけでは意味不明。
 これは、キリスト教神学者たちの間で中世に発生した“普遍論争(「普遍は存在するか?」という問いを巡って行われた哲学上・神学上の論争)”に由来するものらしく、この記事を書くために多少調べてみたものの、僕にはどうにもチンプンカンプン。
 つまりこの映画は、「神様=ペレ」ってくらいバカな子供だった僕にはハナから理解不能だったというわけです(笑)。
 ただし、キリスト教が辿ってきた歴史に興味があるなら、いくらかの予習をした上で観ると、かなり見応えのある作品なんじゃないでしょうか?もちろん原作を読んだ人にも。

 最後に、本作のテーマとは大きくかけ離れる小ネタをひとつ。
 この作品では「死者のまばたき」を見ることが出来ます。死体となったある役者さんが検死を受けている途中、思わずまばたきしちゃうんですねえ。どうしてこのままOKテイクになったのかは不明ですが、世にも珍しいシーンとなってしまいました(笑)。
 おしまい。

薔薇の名前 特別版

薔薇の名前 特別版

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2007/05/11
  • メディア: DVD

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コメント 8

ミック

この映画好きです。
カリ「バラは神の名付けたる名。我々のバラは名も無きバラ」グラフィを学んでいた時と図書館関係の仕事をしていた時に見たので、宗教的な事が分かっていなくても、かなり、面白かったです。
>「バラは神の名付けたる名。我々のバラは名も無きバラ」
この最後は私もやっぱり、覚えていません。
で、もう一度、見てみたいと思います。
by ミック (2007-06-16 23:25) 

ken

「図書館」の持つ意味合いも、この作品の中では重要なポイントでしたね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-16 23:29) 

ecco

私は始めに小説を読んでしまったので
この映画を見たとき、なぬ!こういうことだったのかと
わからないまま読んだ小説を解説してもらったような
そんな感じでした。
ま。
だからっておもしろいいい映画だよってわけでもないのですが。


薔薇の名前とダヴィンチコード。
この2つは私のなかでは、かなり似通った性格の小説・映画で。

どちらも小説で読むほうが断然面白いと思うのですが
わからなかった部分を映画が補ってくれたみたいな・・・^^
by ecco (2007-06-17 21:49) 

ken

薔薇の名前とダヴィンチ・コードは同じ系統の作品らしいですね。
「ダヴィンチ…」の方は原作も読んでないし、映画も観てないので
完全に又聞き状態なんですけど(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-17 22:41) 

こんばんは。
「薔薇の名前」大好きです。「ダ・ヴィンチ・コード」が「薔薇の名前」ほど好きではないのは、ショーン・コネリーとトム・ハンクスの違いです。
まだ可愛いクリスチャン・スレーターも観られるし、ショーン・コネリー好きには、キリスト教が分からなくても楽しめそう。作り手の意図とは違う楽しみ方もできる作品ということで(笑)。
by (2007-06-19 21:34) 

ken

クリスチャン・スレーターはまだあどけない顔してますね。
ショーン・コネリーマニアなら、楽しみ方はまた違いますね。
いいんじゃないでしょうか(笑)。
by ken (2007-06-19 22:41) 

satoco

実は私この映画をみて、なんだか面白いような気がするけど意味がわからなくて、いつか勉強しなおして見直してやろうと思いつつもう十余年です。
当時日本でも評価高かったんですけど、評論家さんたちみんなそんなにキリスト教にくわしいのですかねぇ..まあしかしキリスト教の知識があればもっと楽しめるハリウッド映画は多いですものね。
このあとしばらくスレーターのファンで部屋にポスター貼ったりしてました。
by satoco (2007-06-20 11:36) 

ken

今回この作品を観て、巷の人たちはどれくらいこの作品を理解しているのか
探ってみたのですが、世の中には頭のいい人たちがたくさんいて
背景まで含めてちゃんと理解している人、意外と多かったです。

>まあしかしキリスト教の知識があればもっと楽しめるハリウッド映画は
>多いですものね。

そうなんですよ。
だから僕は何度か聖書も読んだのですが、最近改めて読み直そうかと
思っています。nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-20 14:03) 

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