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イーオン・フラックス [2008年 レビュー]

イーオン・フラックス」(2005年・アメリカ) 監督:カリン・クサマ

 あんまり大きな声じゃ言えないんですが、まだヘアー解禁になってなかった1980年代に「ビニール本」というのがありましてね。これが何かって言うと、肝心なところが見えるか見えないかスレスレのポルノ写真集なんですけど、神田神保町の芳賀書店がそのメッカで、なんなら「芳賀書店」って聞いただけで興奮するヤツまでいたくらい、当時としては最強のエロアイテムだったんですね。
 「ビニール本」と呼ばれる所以は、立ち読み(読みはしないな、立ち見か
)出来ないよう、写真集がビニールで完全密封されてたから。となると、中を見るためにはお買い上げするしかないわけで、結果「表紙のモデルの顔だけで判断して、あとは“勘”で買うしかない」という、“究極のギャンブル”になっちゃってたのです。
 それでもバカスカ売れるもんだから、「ビニ本」業界に途中参入する連中がぞくぞく出て来た。すると、世の常と言うかお約束と言うか、粗悪品が出回るようになったんですね。
 典型的なのは表紙のモデルと中のモデルが違うというパターン。まあ表紙はそこそこ可愛いのに、ビニールを破ってみたら「誰だオマエ」みたいな感じ。最初の2~3枚が洋服を着たままの表紙の娘で、脱ぎ始めたとたんに別人ですから。そんときゃもう神隠しに遭ったかと思いましたよ。「おーい!表紙の娘っ子さ、どこ行っただ~」。
 もうひとつはまともな(なにがまともなんだ)写真がほとんど無いパターン。なんならオッパイも見せてなくて、「まだ『GORO』のほうが激しいぞ!」的なツッコミを入れる始末。
 ただ悔しいことに芳賀書店へ行って文句言えるわけじゃないんですよね。要は出版元の問題だし、出版元だってほとんど暴力団が絡んでたって言うし。
 あれから20余年。
 「イーオン・フラックス」のレビューでなぜビニ本話をしたかというと、表紙はいいけど中身は最悪な映画だったからなんですね(笑)。例えが下品でスイマセン。

 主人公イーオンを演じたシャーリーズ・セロンのビジュアルは見事でした。ルックスも立ち姿も完璧。
 でもアクションはイマイチで、中身はイマ3。
 そんなわけで、「どちらかと言えばこのジャンル、ハズレが多いのにどうしていつも観ちゃうんだろう?」と、自問しながら観てたんですが、ラッキーなことにその答えは見つかった気がします。
 SFってきっと現代アートなんですよ。
 一定のルールを守った上で、確固たる独自の文脈を構築するアート。
 だから僕は観ちゃうんだと思うんです。アート好きだから。
 村上隆さんもあるところで言っていました。
 「面白くもないのについつい見ちゃう。これこそ現代アート」だって。

 唯一疑問だったのは、「モンスター」でアカデミー主演女優賞を獲ったシャーリーズ・セロンがなぜこの仕事を引き受けたのか、ってことだけ。お金ですか?分かりませんけど。
 レビュー888本目にどエライ映画観ちゃいました(笑)。

イーオン・フラックス スタンダード・エディション

イーオン・フラックス スタンダード・エディション

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD

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コメント 12

tomoart

概ね賛成です。いや、ビニ本じゃなくて作品の話ですけどw ワタシはビニ本は買いませんでしたから。自販機以外では(爆)。
by tomoart (2008-07-10 21:24) 

ken

自販機もこれまたギャンブルでしたねえwww(映画のハナシしろ)
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-07-10 23:30) 

snorita

この映画のことは全く知りませんが、前半のビニ本のくだりで、十分笑わせていただきました。
by snorita (2008-07-11 08:48) 

satoco

私も同じように感じましたねえ。
ビニ本文化って今のアダルトサイト文化に生き残ってる気がしますね。
シャーリーズ・セロンは高い仕事も安い仕事もなんでもありですねー。
by satoco (2008-07-11 09:45) 

ken

>snoritaさん
 同年代なら間違いなく「ささるぅ」(オージーには通じないか)ネタですよねw
 nice!ありがとうございます。

>satocoさん
 AVもしかりです。ときどきビックリすることありますもん。
 まだ観てんのかよ、って感じですけど、さすがにここ数年は観てませんw
 高いも安いも関係ないなら、なにがポリシーなんだろう、シャーリー。
 nice!ありがとうございます。
by ken (2008-07-11 12:08) 

satoco

kenさんとこんなお話ができるなんてなんかすごい。光栄です。ww
来週こそは映画見よう。
by satoco (2008-07-12 00:56) 

ken

ヘンなハナシになってしまってスイマセン。
お互いに良い映画を観ましょうw
by ken (2008-07-12 19:42) 

Sparky

「現代アート」の分析、見事です。
そうです、きっと。ビジュアル的になぜか観てみようって思ってしまい、
後悔します。。。(笑)

by Sparky (2008-08-06 22:32) 

ken

たまに心が震えるような現代アートにも出会うんですけどね。
良いのないかなあ?w
by ken (2008-08-07 03:46) 

u_yasu

レビューがビニ本の話から始まるとは!
やられましたぁ〜♪(笑)
by u_yasu (2012-01-02 13:40) 

ken

この頃のレビューって肩の力抜けてましたねw
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-01-02 21:24) 

志望理由

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 志望理由 (2013-07-01 18:16) 

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