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ラストキング・オブ・スコットランド [2008年 レビュー]

ラストキング・オブ・スコットランド」(2006年・アメリカ/イギリス)

 タイトルロールは1970年代ウガンダに君臨した悪名高き“人食い大統領”イディ・アミン。
 その就任直後。一人のスコットランド人医師がウガンダにやってくる。
 彼の名はニコラス・ギャリガン。
 ある日ニコラスは、偶然アミンのケガの手当てをすることになり、それが縁で大統領の主治医として雇われる。アミンは物怖じしないニコラスの物言いを気に入り、次第に医師としてよりもアドバイザーとしての立場を強くしていくが、それは同時に「アミンの正体を知る」ことでもあった…。

 とても良く出来たサスペンスでした。
 フォレスト・ウィッテカーとジェームズ・マカヴォイの演技もさることながら、個人的には編集の仕上がりに感心しました。特に後半20分の繋ぎは、サスペンスとしての評価を決めた20分だったと思います。その緊張感は今世紀最高のハリウッド映画「ブラッド・ダイヤモンド」に匹敵するものがありました。

 主人公が“独裁者”であることを最大限利用した脚色も素晴らしかった。
 何をしでかすか分からない人間が一人いるおかげで、シーン設定や展開、セリフはいずれも自由に創造することが可能で、人格を変えてしまうような極端な描写でなければ、観客からリアリティを追及される恐れもありません。
 何よりサスペンスドラマの予定調和を(一部エピソードを除いて)回避した脚色が見事。おかげで観客はエンドロール直前まで緊張を持続できるというわけです。


 しかし、僕はこの作品を手放しで褒めることは出来ません。
 それは本作が「事実を基にした物語」と謳いながら、主人公の一人ニコラス・ギャリガンが架空の人物であるからです。
 物語を面白くするために必要なのは分かります。ならば「一部フィクション」と最初に教えてもらいたかった。少なくとも僕自身、ニコラスは実在の人物だろうと信じていました。ところが本編の後半、ニコラスがアミンの妻を妊娠させてしまう件で唯一予定調和を疑いました。映画は観客を一旦その世界に引き込んだら、最後まで現実に引き戻してはいけないのです。
 僕は途中で疑心暗鬼になりました。それを後半の20分が挽回するのですが、結果的には残念でなりません。

 本作でアカデミー主演男優賞を獲得したフォレスト・ウィッテカー。
 彼の仕事は一見の価値ありです。

ラストキング・オブ・スコットランド

ラストキング・オブ・スコットランド

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD

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コメント 4

地蔵

こんにちは。

> 本作でアカデミー主演男優賞を獲得したフォレスト・ウィッテカー。
> 彼の仕事は一見の価値ありです。

おっしゃるとおり、あの迫力はなかなか怖かったです。

また、今作以来、ジェームズ・マカヴォイの出演作を鑑賞する機会が多くなり
最近では『ウォンテッド』で注目され始めて、当方としては最近の注目株と
思っています。
by 地蔵 (2008-09-22 12:40) 

ken

マカヴォイはいい顔してますね。僕もかなり気に入りました。
「ウォンテッド」も観に行きたいと思っています。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-09-22 13:22) 

muemue

こんばんは。
先日は、私のblogにお立ち寄りいただきありがとうございました。
この映画(ラストキング・スコットランド)、観に行きたかったのに、タイミングを逃して見られなかったんですよね。
「ブラッド・ダイヤモンド」に匹敵するのですか…それは見逃せませんね。
今度、DVDを借りてみます。
by muemue (2008-09-22 22:00) 

ken

後半の20分が…という注釈つきです。お間違いなくw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-09-23 02:00) 

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