JUNO/ジュノ [2008年 レビュー]
「JUNO/ジュノ」(2007年・アメリカ) 監督:ジェイソン・ライトマン 脚本:ディアブロ・コディ
この映画はひと言でいうと優等生。とても良く出来ている。
未成年の望まない妊娠というテーマを、最初から最後までポジティブに描ききったところがまずエライ。これは本作でアカデミー脚本賞を受賞したディアブロ・コディのセンスによるものだが、監督の力なしにオスカーは手に出来なかったと思う。それほど映像のセンスを感じる作品だった。
監督のジェイソン・ライトマンは1977年生まれ。「サンキュー・スモーキング」で長編デビューし、「JUNO」は2作目。いずれもローバジェットで作られ、スタートこそ上映館数は少なかったが、結果的に大ヒットを記録している。
しかし、似ているのは映画の“生い立ち”だけではない。この2作にはもっと重要な共通点がある。それは「笑えない話を、笑える話にした」という点だ。
監督のセンスを感じたのはオープニングから。
まるで子供向け番組のタイトルのようなアニメーション。すでに罪の意識は低い。クレジットを処理すると同時に始まるドラッグストアの店員とジュノとの丁々発止。続いて現れる“ピンクの十字架”に、日本風に言うなら「チョーサイアク」と自らを罵るジュノ。この先の展開に興味を抱かない観客は皆無だ。そして、ここまでのテンポも見事だった。
本編でもうひとつ感心したのは、「SUMMER」や「AUTUMN」など季節が替わることに表示される春夏秋冬それぞれのタイトルバック。ジュノを妊娠させた同級生のポーリーは陸上部の選手で、タイトルバックにはすべて陸上部のランニングシーンが使われている。僕にはこれが笑えた。と言うのも、ストーリーが進むにつれジュノは人間的な成長を遂げていくのに対し、男はまるでハムスターの如くいつまで経ってもバカみたいに走るだけ。これはライトマンの自虐的な演出だったと思う。「出産を控えた女性の前で、すべての男は無力」というメッセージも含んだナイスなカットだった。
途中、ドラマ「14才の母」を思い出した。
日本の中学生の妊娠と、アメリカの高校生の妊娠では、世の中に与える衝撃は異なると理解しつつも、同じ題材でこうも描き方が異なるものかと感心したからだ。
コディの脚本が優れているのは、早い段階で「新たな“命”はすべからく祝福されるべきもの」という方向に舵を切っているところだ。「高校生の妊娠」は笑えない話だが、「新しい命が誰かを幸福にする」と言う話なら笑える話に昇華することが出来る。なんと素晴らしい発想の転換だろう。
興味本位のセックスで生まれたひとつの命が多くの人間の人生を変えて行く。
「素晴らしき哉、人生!」の一節も思い出す。
「一人の命は大勢の人生に影響しているんだ。一人いないだけで世界は一変する」
「JUNO」の中にも珠玉の台詞がいくつかあった。
観る人の年齢と性別と環境によって心に刺さる台詞は異なると思う。
けれど、すべての人に等しく感動があるだろう。
この映画はひと言でいうと優等生。とても良く出来ている。
未成年の望まない妊娠というテーマを、最初から最後までポジティブに描ききったところがまずエライ。これは本作でアカデミー脚本賞を受賞したディアブロ・コディのセンスによるものだが、監督の力なしにオスカーは手に出来なかったと思う。それほど映像のセンスを感じる作品だった。
監督のジェイソン・ライトマンは1977年生まれ。「サンキュー・スモーキング」で長編デビューし、「JUNO」は2作目。いずれもローバジェットで作られ、スタートこそ上映館数は少なかったが、結果的に大ヒットを記録している。
しかし、似ているのは映画の“生い立ち”だけではない。この2作にはもっと重要な共通点がある。それは「笑えない話を、笑える話にした」という点だ。
監督のセンスを感じたのはオープニングから。
まるで子供向け番組のタイトルのようなアニメーション。すでに罪の意識は低い。クレジットを処理すると同時に始まるドラッグストアの店員とジュノとの丁々発止。続いて現れる“ピンクの十字架”に、日本風に言うなら「チョーサイアク」と自らを罵るジュノ。この先の展開に興味を抱かない観客は皆無だ。そして、ここまでのテンポも見事だった。
本編でもうひとつ感心したのは、「SUMMER」や「AUTUMN」など季節が替わることに表示される春夏秋冬それぞれのタイトルバック。ジュノを妊娠させた同級生のポーリーは陸上部の選手で、タイトルバックにはすべて陸上部のランニングシーンが使われている。僕にはこれが笑えた。と言うのも、ストーリーが進むにつれジュノは人間的な成長を遂げていくのに対し、男はまるでハムスターの如くいつまで経ってもバカみたいに走るだけ。これはライトマンの自虐的な演出だったと思う。「出産を控えた女性の前で、すべての男は無力」というメッセージも含んだナイスなカットだった。
途中、ドラマ「14才の母」を思い出した。
日本の中学生の妊娠と、アメリカの高校生の妊娠では、世の中に与える衝撃は異なると理解しつつも、同じ題材でこうも描き方が異なるものかと感心したからだ。
コディの脚本が優れているのは、早い段階で「新たな“命”はすべからく祝福されるべきもの」という方向に舵を切っているところだ。「高校生の妊娠」は笑えない話だが、「新しい命が誰かを幸福にする」と言う話なら笑える話に昇華することが出来る。なんと素晴らしい発想の転換だろう。
興味本位のセックスで生まれたひとつの命が多くの人間の人生を変えて行く。
「素晴らしき哉、人生!」の一節も思い出す。
「一人の命は大勢の人生に影響しているんだ。一人いないだけで世界は一変する」
「JUNO」の中にも珠玉の台詞がいくつかあった。
観る人の年齢と性別と環境によって心に刺さる台詞は異なると思う。
けれど、すべての人に等しく感動があるだろう。
Kenさんの記事はストレートに伝わってきます。
「サンキュー・スモーキング」と続けて観たいと思いました☆
by Betty (2008-11-27 14:22)
おお、未見ならぜひ2本立てでどうぞ!
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-11-27 14:38)
命について考えさせられそうな作品なのでしょうか。
ジュノの成長、観たくなりました!
by ram (2008-11-27 21:06)
女性は考えさせられることが沢山あると思いますよ。
もちろん男も、なんですけどw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-11-27 21:13)
この作品は日比谷シャンテで今年観ました。(^^)
確かに冒頭の画面でJUNOを応援した気持ちになりました。
それに引き換え、彼(ポーリー)のボケーッとした表情が途中イラッとしましたが(笑)、JUNOを彼なりに包もうとしているように見えて終盤には可愛く見えちゃったりして。。。JUNOの義母役もいい味出してましたね。
by うつぼ (2008-11-27 22:19)
レビューではネタバレぽくなるので触れませんでしたが、
ジュノの両親と同級生の女友達はとても良く書けていたと思います。
特に妊娠を告白するシーンは、それぞれのキャラが立った見事なシーン
だったと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-11-28 01:48)
ジュノの男の趣味の悪さに、まずは笑えました。「サンキュー・スモーキング」も同じ監督なんですね。今度、観てみよう!
by 江戸うっどスキー (2008-12-07 22:39)
あの男の子はイケてませんでしたね~w
サンキュー・スモーキングはブラックな笑いを愉しんでください!
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-07 23:34)
"ハムスターの如く~"に笑いました。
14才の母、というか日本との大きな違いは、自分の手で育てないことの感覚的な重みの違いのように思います。養子に出す選択肢を自然に選べるなら14才の母ももう少し明るい話になったかも。
一つ一ついいシーンが多くて、何回か繰り返して見てしまいそうです。いい映画でした。
by satoco (2009-08-10 22:28)
仰るとおり自分で育てる育てないの差は大きいですね。
それにしてもいい映画だったと改めて思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-08-11 02:10)