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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [2008年 レビュー]

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007年・アメリカ) 監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン

 2007年のアカデミー賞を賑わせたポール・トーマス・アンダーソン5年ぶりの新作だが、僕はまったく愉しめなかった。その理由はたった1行の字幕を見落としたことによる。
 序盤。一攫千金を狙う山師の男ダニエル(ダニエル・デイ=ルイス)を1人の青年が訪ねてくる。青年の名はポール(ポール・ダノ)。ポールは自分の故郷の牧場に石油が滲み出ている情報をダニエルに売りつける。そのときダニエルはポールに聞く。
 「家族は?」
 ここで僕は「イーライという弟が」という一文を見落としてしまう。これが決定的なミスだった。
 イーライとはのちに重要な役割を果たす登場人物の1人で、なぜかポールの双子の弟という設定。つまりポール・ダノは劇中2度、「はじめまして」とダニエルと握手するのだから、混乱しないわけがない。それにしてもポールとダニエルをなぜ双子にする必要があったのか。僕にはその理由が分からなかった。

 「ダニエル・デイ=ルイス」ショーである。
 158分の本編中、彼が出ていないカットがはたして何カットあっただろう。出ずっぱり感はまるで「ダイ・ハード」のブルース・ウィリス並み。少なくともダニエルが登場しない“シーン”はゼロじゃないかと思う。
 圧倒的な存在感。奇抜な設定。そして劇的な生涯。僕は映画のあとで「もしや実在の人物だったか?」と思った。それほどダニエル・デイ=ルイスは、その時代に生きた人間を迷いなく演じていたと思う。まさにアカデミー主演男優賞に相応しい。
 個人的には音楽も気に入った。
 その旋律は不吉で不穏。基本誰も信じないダニエルの心情を冒頭から奏でる。しかも観客の精神状態をもコントロールしていたと思う。僕は終始、ダニエルをとりまく人間たちに目を配っていた気がする。とにかく心休まるときがないのだ。担当したのは映画界でまったくキャリアのなかったジョニー・グリーンウッド。誰かと思ったら「レディオヘッド」のメンバーだった。このキャスティングはクール。

 それにしても。
 ポールとイーライが双子であることを理解しても、僕はこの映画を愉しめなかったと思う。
 なんといっても救いの無さが辛い。だから実話かと思ったのだけれど。
 少なくとも気楽に観られる類のものじゃない。「マグノリア」よりも「パンチドランク・ラブ」よりも遥かに哲学的な作品。

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  • 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
  • メディア: DVD

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コメント 5

Sho

うーん・・面白そうです!

by Sho (2008-12-01 04:54) 

Betty

時間の余裕がある時にじっくり鑑賞したい1作です。

by Betty (2008-12-01 15:49) 

ken

>Shoさん
 ぜひ、字幕の見落としの無いようにしてくださいw
 nice!ありがとうございます。

>Bettyさん
 気持ちの余裕も大事ですw
 nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-01 19:15) 

Betty

あ・・気持ちの余裕・・それが一番難しい・・
せわしない毎日を送っております><;

度々、すみません・・

by Betty (2008-12-03 09:50) 

ken

12月に入って僕ももう気持の余裕はなくなりましたw
映画観るヒマ、ないかも。
by ken (2008-12-03 10:45) 

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