クワイエットルームにようこそ [2008年 レビュー]
「クワイエットルームにようこそ」(2007年・日本) 原作・脚本・監督:松尾スズキ
精神病棟を舞台にした人間再生のドラマ。
キャスティングは豪華だし、“ネタ”も“間”も心地良く、一見すると「松尾スズキらしいコメディ」なのだが、冷静に観ると「17歳のカルテ」や「カッコーの巣の上で」とは一味違う、まさに“今のニッポン”を映し出す見事な人物描写がされている。
中でも主人公の明日香(内田有紀)はケースこそ稀だが、無自覚のままドロップアウトしていく若い社会人の象徴であり、松尾スズキはその“危険な様”を見世物として実に巧く作っていたと思う。
何より「精神病棟」という非日常の閉鎖空間を、次第に「中も外も大して変わらない」と観客に思わせる演出が楽しくもあり、恐ろしい。
たとえば元AV女優で過食症の西野(大竹しのぶ)も、自分の髪の毛に火をつけるチリチリ(馬渕英俚可)も、和装で健常者を装う金原(筒井真理子)も、閉鎖病棟にいるからこそ「患者」に分類されるが、見渡せば彼女たちは“外にもフツーにいる”人たちであって、それよりも彼女たちを管理する医師や看護師たちこそ“外では通用しない異常な人”と描かれているところが一種痛快だ。
ブラックコメディである。
見世物としてのクオリティを上げたのは女優陣の“座組み”だったと思う。
内田有紀、蒼井優、りょう、大竹しのぶ。
まず存在からして自然らしからぬ内田有紀のビジュアルは、見るからに汚い宮藤官九郎と最後まで釣り合いは取れなかったけれど、それでも最低限の違和感を払しょくしたのは彼女自身の演技だったと思う。僕は内田有紀の表情から、人間の適応能力の高さと、人は必ず「どこか」で「誰か」と暮らす生き物であることを教えられた。
蒼井優は「体重をあと2キロ増やせば外出許可がもらえるの」と言う役を演じるために、相当の減量を果たしたと思う。一瞬わが目を疑うほどの顔痩せぶりで、その姿勢に敬服する。
りょう。クールビューティの代表格。敵役としては申し分なし。
大竹しのぶ。天才。もしかしたら「カッコーの巣の上で」の女版ジャック・ニコルソンを演じられるんじゃないかと思うほど素晴らしい演技だった。まさに怖いもの無し。
そんな中にあって宮藤官九郎も抜群に良かった。放送作家の鉄雄役はきっと“あて書き”だろう。クドカンだからこそ出来た生々しい役どころだったと思う。
観る人によって感じ入るポイントが違うと思う。
僕は、「正常」と「異常」を分けるものは「コミニュケーションの成立不成立」であることを学んだ。
もうひとつ。「周囲を見渡し、バランス感覚を失わなければ、生きることは大して難しくない」ということも。
精神病棟を舞台にした人間再生のドラマ。
キャスティングは豪華だし、“ネタ”も“間”も心地良く、一見すると「松尾スズキらしいコメディ」なのだが、冷静に観ると「17歳のカルテ」や「カッコーの巣の上で」とは一味違う、まさに“今のニッポン”を映し出す見事な人物描写がされている。
中でも主人公の明日香(内田有紀)はケースこそ稀だが、無自覚のままドロップアウトしていく若い社会人の象徴であり、松尾スズキはその“危険な様”を見世物として実に巧く作っていたと思う。
何より「精神病棟」という非日常の閉鎖空間を、次第に「中も外も大して変わらない」と観客に思わせる演出が楽しくもあり、恐ろしい。
たとえば元AV女優で過食症の西野(大竹しのぶ)も、自分の髪の毛に火をつけるチリチリ(馬渕英俚可)も、和装で健常者を装う金原(筒井真理子)も、閉鎖病棟にいるからこそ「患者」に分類されるが、見渡せば彼女たちは“外にもフツーにいる”人たちであって、それよりも彼女たちを管理する医師や看護師たちこそ“外では通用しない異常な人”と描かれているところが一種痛快だ。
ブラックコメディである。
見世物としてのクオリティを上げたのは女優陣の“座組み”だったと思う。
内田有紀、蒼井優、りょう、大竹しのぶ。
まず存在からして自然らしからぬ内田有紀のビジュアルは、見るからに汚い宮藤官九郎と最後まで釣り合いは取れなかったけれど、それでも最低限の違和感を払しょくしたのは彼女自身の演技だったと思う。僕は内田有紀の表情から、人間の適応能力の高さと、人は必ず「どこか」で「誰か」と暮らす生き物であることを教えられた。
蒼井優は「体重をあと2キロ増やせば外出許可がもらえるの」と言う役を演じるために、相当の減量を果たしたと思う。一瞬わが目を疑うほどの顔痩せぶりで、その姿勢に敬服する。
りょう。クールビューティの代表格。敵役としては申し分なし。
大竹しのぶ。天才。もしかしたら「カッコーの巣の上で」の女版ジャック・ニコルソンを演じられるんじゃないかと思うほど素晴らしい演技だった。まさに怖いもの無し。
そんな中にあって宮藤官九郎も抜群に良かった。放送作家の鉄雄役はきっと“あて書き”だろう。クドカンだからこそ出来た生々しい役どころだったと思う。
観る人によって感じ入るポイントが違うと思う。
僕は、「正常」と「異常」を分けるものは「コミニュケーションの成立不成立」であることを学んだ。
もうひとつ。「周囲を見渡し、バランス感覚を失わなければ、生きることは大して難しくない」ということも。
クワイエットルームにようこそ 特別版 (初回限定生産2枚組) [DVD]
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- メディア: DVD
そうそう、「彼女たち」も外にフツーにいる人たちですよね。で、りょうは「あの人異常よ!」なんて言われて、確かに異常に思えてくる。
マトリョーシカの様に、「あれ?まだ中にあったんだ」という感じで、登場人物の内側が提示されるのが面白かったです。
by Sho (2008-12-10 17:46)
僕は妻夫木が演じた「コモノ」が一番おかしなヤツだと思いましたw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-10 18:48)
無自覚のままドロップアウトしていく、という表現に膝を打つ思いです。
話のベースは「17歳のカルテ」なのに全然違うよさがあるなあと思いながら見ていました。
大竹しのぶはほんとすごかったです。こういういやらしさ、すごくうまいですね。
by satoco (2008-12-10 23:11)
大竹さん、すごかったですね。ヘンテコな妻夫木くんもよかった。
妻夫木くんって、ヘンテコな役の時のほうがいい気がします。
by ももこ (2008-12-11 00:25)
こんばんは。
たいへんすばらしいレビューだと思いました。
松尾スズキの作品は、前に「恋の門」という映画を見て、とてもおもしろかったので、この映画もぜひ見たいと思います。役者の違った魅力を引き出すのが、上手な監督なんでしょうね。
by coco030705 (2008-12-11 00:52)
>satocoさん
女子専用閉鎖病棟と言えば「17歳のカルテ」ですよね。
同じ脚本を別の監督がやるとどうなるか。
その面白さを追求したくなる2本でした。
nice!ありがとうございます。
>ももこさん
妻夫木クンは本当にヘンな役こそ面白いと思いました。
だって本人は至ってまともですもんねw
nice!ありがとうございます。
>coco030705さん
「恋の門」。実はこれから観ようとしています。
どれくらいのもんなのか、すごく興味があります。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-11 02:02)
kenさんのレビューを読んで、観たくなりさっきレンタル屋さんで借りてきました。観るのが楽しみです。
by カオリ (2008-12-11 18:43)
嬉しいです。じっくり堪能してください。
by ken (2008-12-11 22:24)
薔薇組みぐらいな女の人で最近あふれかえってますなあ。
ところで、コモノはいいね。
あと、大竹しのぶは黒い家最高でした。
みてみそ。
by **feeling** (2008-12-13 00:28)
合点承知の介。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-13 00:57)
ようやく観ました! レビュー書いたので、TBさせていただきます♪
by カオリ (2008-12-18 22:21)
はい。あとでお邪魔しますw
by ken (2008-12-19 05:47)