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中国の植物学者の娘たち [2008年 レビュー]

中国の植物学者の娘たち」(2005年・カナダ/フランス) 監督:ダイ・シージエ

 「小さな中国のお針子」の監督が描く、中国禁断の同性愛映画。
 邦題からまさかこんな内容の映画だとは思いもしなかったけれど、事前に映画の背景を知るときっと観たくなる一篇だと思う。

 まず中国ではタブーとされている同性愛の物語だけに、中国国内での撮影許可は下りなかった。
 また主役のリー・ミン役を演じる予定だった「小さな中国のお針子」のジョウ・シュンは、周囲のアドバイスを受け降板することにした。
 代わりにオーディションに現れたのは中国人の父とフランス人の母を持つミレーヌ・ジャンパノワ。彼女はまったく中国人に見えなかったが、監督は急遽設定を変更しミレーヌを迎い入れた。その理由を「外見のみならず、知性、思想、文化的にミックスされているということは、人に理解されず閉め出された存在で誰よりも愛と優しさを求めるようになる」と話している。
 ミレーヌの相手役をつとめたリー・シャオランと植物学者役のリン・トンフーは共に中国で活躍する俳優だが、当局を恐れることなく出演を決めた。
 そしてロケ地に選ばれたのはベトナム。中国との国境にほど近い場所で撮影され、中国もベトナムもない“アジア”の空気がフィルムに収められている。

 植物学者の娘アンと、実習生として同居することになったリー・ミンが心を通わせていく描写は決して雄弁ではない。途中、「若干説明が足りないんじゃないか?」とも思ったが、それでも僕が強い不満を感じなかったのは、事の成り行きを認知していたからだろう。僕はこの端折り方を悪いとは思わない。「私の頭の中の消しゴム」のように、そもそもの関係を築くところからジックリ見せられる方が時間の無駄だと思う。ミスリードを必要としないテーマが明確なものこそ、無駄な助走は省くべきだ。
 しかし、ドラマとして満足したかと言うと実はそうでもない。何より同性を愛してしまったが故の苦悩はもう一歩踏み込めていない気がする。この問題は本人同士だけでなく、家族も社会も、もっと早い段階で巻き込むべきだった。そうすることによって中国における同性愛の問題を、より深く訴えることが出来たはずなのだ。

 本作は「バンジージャンプする」や「ブロークバック・マウンテン」に嫌悪感を抱かない人なら受け入れられる作品だと思う。そして今の時代に生きていられることを感謝するだろう。

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