ONCE ダブリンの街角で [2009年 ベスト20]
「ONCE ダブリンの街角で」(2006年・アイルランド) 監督・脚本:ジョン・カーニー
素晴らしくシンプルでピュアな映画。
僕は劇中歌と、チェコのシンガーソングライター、マルケタ・イルグロヴァの可愛らしさにやられました。フツー故障した掃除機を、まるで犬の散歩みたいに持ち歩きませんって。でも僕はこの瞬間にノックアウトされたんですけど(笑)。ま、そんな個人的なことはともかく。
やっぱり歌がいい。
アカデミー歌曲賞に選ばれた「Falling Slowly」だけじゃなくとにかく全部いい。もちろんグレン・ハンサードのパフォーマンスもいいんだけど、まず台詞の代わりにストーリーを補完する歌詞の出来栄えが良くて、さらにメロディで主人公2人の“感情の波”を表現したのもいい。それでいてハリウッド産ミュージカルのような唐突感もなく、すべての歌に必然性を持たせた脚本が見事だ。
撮影も面白い。
特に野外のシーンはドキュメンタリーのような客観視の構図で、こうして切り取られなければ、ありふれた日常の中に埋没していただろう、ありふれた男と女のエピソードであることを観客に伝えつつ、けれど「すべての人間に語るべきドラマがある」ことも教えてくれる。
アングルについても、決してクローズアップがないわけではないけれど、それを多用することはなく、俳優との微妙な距離感を終始保っている点が絶妙で、これが(たとえ掃除機を引っ張って街中を歩こうと)リアリティを損なわない要因のひとつになっている。
美しいのは2人の心の揺れだ。
恋愛が始まる瞬間はどんなケースであっても確実に劇的で、またすべての人の記憶を喚起させる力がある。この作品は恋愛が始まるか始まらないかという、人間の一生から換算するとほんのわずかでしかない微妙な期間の物語だ。だからほとんどの人が、いくつかのシーンで自分の過去を振り返ることになるし、そのときの「ときめき」と「期待」と「後悔」を生々しく追体験する。恋愛の記憶は時が経つにつれ美化されるものだ。だから追体験させられた観客に本作の2人の“揺れ”は美しく映る。
総じてこの作品が嫌われない理由は、ほとんどの人が恋愛の記憶を否定出来ないからだろう。どんな終わり方をした恋愛でも、始まる瞬間は美しかったのだから。
恋愛と音楽、そして夢見ること。
どれも素晴らしいものであることを思い出させてくれる佳作。
現代の恋愛ドラマでありながら、現代の必須アイテム「携帯電話」が使われていないのも、すべての世代に受け入れられる理由のひとつだろう。
そして最後にもう一度、「マルケタ・イルグロヴァがなんたって可愛い」(笑)。
素晴らしくシンプルでピュアな映画。
僕は劇中歌と、チェコのシンガーソングライター、マルケタ・イルグロヴァの可愛らしさにやられました。フツー故障した掃除機を、まるで犬の散歩みたいに持ち歩きませんって。でも僕はこの瞬間にノックアウトされたんですけど(笑)。ま、そんな個人的なことはともかく。
やっぱり歌がいい。
アカデミー歌曲賞に選ばれた「Falling Slowly」だけじゃなくとにかく全部いい。もちろんグレン・ハンサードのパフォーマンスもいいんだけど、まず台詞の代わりにストーリーを補完する歌詞の出来栄えが良くて、さらにメロディで主人公2人の“感情の波”を表現したのもいい。それでいてハリウッド産ミュージカルのような唐突感もなく、すべての歌に必然性を持たせた脚本が見事だ。
撮影も面白い。
特に野外のシーンはドキュメンタリーのような客観視の構図で、こうして切り取られなければ、ありふれた日常の中に埋没していただろう、ありふれた男と女のエピソードであることを観客に伝えつつ、けれど「すべての人間に語るべきドラマがある」ことも教えてくれる。
アングルについても、決してクローズアップがないわけではないけれど、それを多用することはなく、俳優との微妙な距離感を終始保っている点が絶妙で、これが(たとえ掃除機を引っ張って街中を歩こうと)リアリティを損なわない要因のひとつになっている。
美しいのは2人の心の揺れだ。
恋愛が始まる瞬間はどんなケースであっても確実に劇的で、またすべての人の記憶を喚起させる力がある。この作品は恋愛が始まるか始まらないかという、人間の一生から換算するとほんのわずかでしかない微妙な期間の物語だ。だからほとんどの人が、いくつかのシーンで自分の過去を振り返ることになるし、そのときの「ときめき」と「期待」と「後悔」を生々しく追体験する。恋愛の記憶は時が経つにつれ美化されるものだ。だから追体験させられた観客に本作の2人の“揺れ”は美しく映る。
総じてこの作品が嫌われない理由は、ほとんどの人が恋愛の記憶を否定出来ないからだろう。どんな終わり方をした恋愛でも、始まる瞬間は美しかったのだから。
恋愛と音楽、そして夢見ること。
どれも素晴らしいものであることを思い出させてくれる佳作。
現代の恋愛ドラマでありながら、現代の必須アイテム「携帯電話」が使われていないのも、すべての世代に受け入れられる理由のひとつだろう。
そして最後にもう一度、「マルケタ・イルグロヴァがなんたって可愛い」(笑)。
2009-02-27 01:15
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コメント(18)
トラックバック(1)
おはようございます。
この映画、私も見ました。
ストーリーの流れがとても自然で、
見終わった後には清涼感が残るような、いい映画だったと思います。
by ゆー (2009-02-27 08:36)
おはようございます☆
わたしもこの映画見ました。ドキュメントタッチの画面のブレが大画面では少し酔ってしまいました;;
音楽も素敵ですよね^^ サントラ買っちゃいました♪
by Betty (2009-02-27 09:19)
>ゆーさん
朝、早いですねw
実生活も映画も“自然”ってやっぱり大事ですね。
nice!ありがとうございます。
>Bettyさん
こちらもお早いw
あのブレが実はつりばし効果になっているんじゃないかと思いました。
サントラ、欲しいな。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-02-27 12:02)
ヨイ作品でした
結末も粋で、イイ感じです
マタ見たくなっちゃいました!
by 魚河岸おじさん (2009-02-27 16:05)
>恋愛の記憶は時が経つにつれ美化される...
恋愛中それに気がついてれば、もすこし、いい恋もできるってもんだ、と思うんだけど。っつーか、それに気がつく時点で、もう終わっちゃってるんでしょうかね。
by snorita (2009-02-28 00:14)
>魚河岸おじさん
ピアノの件は男の脚本家が自分に酔って書く結末だったな、
と思いましたけど、でもいい出来でしたね。
>snoritaさん
間違いなく終わってますねw
恋愛中は、美化できないことが沢山あるもんです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-02-28 02:05)
素敵な映画でしたね。
掃除機を散歩させているみたいなあのシーンも良かったですね。
私は最後のピアノのシーンちょっと引っかかりましたねど。
ヒロインがかわいかった。歌っているときの声が良かったです。
by noel (2009-02-28 12:06)
ピアノはね、若干引っ掛かりますよねw
でも、そんなことすっ飛ばすくらいマルケタ・イルグロヴァがなんたって可愛い!w
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-02-28 22:37)
こんにちは。
歌がいいですよね~!
音楽を作り上げる情熱と心地よさが心に響きました。
それだけにとても切なかったです。
観てからだいぶたつので、また見直してみたいです☆
by non_0101 (2009-03-01 11:06)
歌はひねり出すものじゃなく、内から湧き出るときが一番いいんですよね。
楽器店での2人のセッションが本当に美しかった!
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-03-01 11:26)
私も掃除機を犬の散歩のように持ち歩くシーンにやられました。
また、バイクに乗って二人が出かけるところも良かったです。
寒々とした景色の中で良い人ばかりが登場して心温まる作品でした。
by silvercopen (2009-03-01 11:53)
アパートにたむろしているGuyや、テレビを観に来るGuyが
何か問題を起こすのかと思ったらそうじゃないし、
レンタルスタジオのミキサーもいい人だったし、ホントいい人たちばかりでしたね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-03-01 12:21)
楽器店でのセッション、良かったですね~。
お互いのハートにスイッチ入った瞬間が見れた様でした。
by 江戸うっどスキー (2009-03-02 01:31)
あの瞬間、恋しなかったらウソですよねw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-03-02 22:19)
私も大好きな作品です。
心情が湧き上がるように歌に綴られていく様が、とっても自然というかストーリーと合ってました。
あの二人、実際も付き合うようになったとか。
by クリス (2009-03-08 08:47)
デキちゃった映画でしたか!w
そりゃそうかもね。nice!ありがとうございます。
by ken (2009-03-08 10:11)
こんばんは。ご無沙汰です。
この映画、よかったですね。私も大好きな映画です。
グレン・ハンサードの歌もよかったんだけど、私はマルケタの
歌が大好きでした。
それと、kenさんが書いていらっしゃる「2人の心の揺れ」の
文、そうだなあと感心しました。
このピュアさがエンディングをいいものにしたと思います。
またお邪魔します。
by coco030705 (2009-04-23 23:20)
人生における恋愛はスパイスのようなもの。
小さな一粒が、大きな“味”になるんですよね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-04-25 21:46)