時をかける少女 [2009年 ベスト20]
「時をかける少女」(2006年・日本) 監督:細田守 脚本:奥寺佐渡子
アニメーション版。
原田知世のオリジナル版を慈しむ者としては全く観る必要性を感じなかったのですが、ふとしたきっかけで観てみたら意外や面白かった。
脚本がいい。
誰が書いたのかと思ったら女性だったことにまず納得。そして後に「しゃべれども しゃべれども」を書く人だったのも腑に落ちた。僕が気に入ったのは、恋愛にリアリティを感じていなかった少女が、クラスメイトのさりげない告白をきっかけに目覚めた“もう一人の自分”となかなか折り合いをつけられないでいる様。およそ男の脚本家には書けないだろう繊細な心の揺れが、実に可愛らしく、そして微笑ましく描かれていました。
「しゃべれども…」と共通しているのは観客に“感じさせる”脚本だったこと。細田監督の演出も良かったのですが、“沈黙の芝居”が効果的だったと思います。この「決してむやみに語らせない」、あるいは「観客に行間を読ませる」タッチは奥寺さんの持ち味なのかも知れません。
ストーリーもいい。
タイムリープという特殊能力を、恋愛の重大局面で使ってしまう設定が女子高生の身の丈に合っていて、事が重大にならない分、安心して観ていられます。と、同時に極めてメルヘンチックだったオリジナル版から時代を経て、いかにも現代的な作品に仕上げられていたのが僕には新鮮でした。
そして素晴らしい青春映画だったと思います。
印象的だったのは、未来から来た少年と真琴の別れのシーン。涙とは無縁の生活を送って来た真琴が、ここでは天にも届かんばかりの泣き声を上げます。このシーンを観ながら僕は、人を大きく成長させるのはやっぱり「別れ」なんだなと思いました。
別れの涙は相手を想う涙。その瞬間、自分が相手に対してどんな感情を抱いていたかを知り、それまでの自分を恥じることになります。そうして生まれた後悔の念から「時の流れは決して止められない」、さらに「時間は決して無限ではない」ことを知るのです。そうと知った真琴は、これからきっと充実した生活を送るのでしょう。僕がそう感じたこの後味の良さも、評価すべき重要なポイントだと思います。
最後にもうひとつ。
本作はアニメーションだったことが効いています。アニメーション最大のメリットは、実写と違っていろんなものを「省略」出来ることです。人の顔。街の風景。役者の芝居。不必要な情報を排除し、見せたいものにフォーカスする演出はアニメーションにしか出来ません。最も効果的だったのは“少年”が時間を止めたシーン。街のど真ん中で真琴と会話するこの場面は、実写だったらスクリーンに余計な情報が溢れて、観ていられなかったかも知れないと思いました。
日本中の中高生にオススメの愛すべき青春映画。
原作読んでみようかな。
アニメーション版。
原田知世のオリジナル版を慈しむ者としては全く観る必要性を感じなかったのですが、ふとしたきっかけで観てみたら意外や面白かった。
脚本がいい。
誰が書いたのかと思ったら女性だったことにまず納得。そして後に「しゃべれども しゃべれども」を書く人だったのも腑に落ちた。僕が気に入ったのは、恋愛にリアリティを感じていなかった少女が、クラスメイトのさりげない告白をきっかけに目覚めた“もう一人の自分”となかなか折り合いをつけられないでいる様。およそ男の脚本家には書けないだろう繊細な心の揺れが、実に可愛らしく、そして微笑ましく描かれていました。
「しゃべれども…」と共通しているのは観客に“感じさせる”脚本だったこと。細田監督の演出も良かったのですが、“沈黙の芝居”が効果的だったと思います。この「決してむやみに語らせない」、あるいは「観客に行間を読ませる」タッチは奥寺さんの持ち味なのかも知れません。
ストーリーもいい。
タイムリープという特殊能力を、恋愛の重大局面で使ってしまう設定が女子高生の身の丈に合っていて、事が重大にならない分、安心して観ていられます。と、同時に極めてメルヘンチックだったオリジナル版から時代を経て、いかにも現代的な作品に仕上げられていたのが僕には新鮮でした。
そして素晴らしい青春映画だったと思います。
印象的だったのは、未来から来た少年と真琴の別れのシーン。涙とは無縁の生活を送って来た真琴が、ここでは天にも届かんばかりの泣き声を上げます。このシーンを観ながら僕は、人を大きく成長させるのはやっぱり「別れ」なんだなと思いました。
別れの涙は相手を想う涙。その瞬間、自分が相手に対してどんな感情を抱いていたかを知り、それまでの自分を恥じることになります。そうして生まれた後悔の念から「時の流れは決して止められない」、さらに「時間は決して無限ではない」ことを知るのです。そうと知った真琴は、これからきっと充実した生活を送るのでしょう。僕がそう感じたこの後味の良さも、評価すべき重要なポイントだと思います。
最後にもうひとつ。
本作はアニメーションだったことが効いています。アニメーション最大のメリットは、実写と違っていろんなものを「省略」出来ることです。人の顔。街の風景。役者の芝居。不必要な情報を排除し、見せたいものにフォーカスする演出はアニメーションにしか出来ません。最も効果的だったのは“少年”が時間を止めたシーン。街のど真ん中で真琴と会話するこの場面は、実写だったらスクリーンに余計な情報が溢れて、観ていられなかったかも知れないと思いました。
日本中の中高生にオススメの愛すべき青春映画。
原作読んでみようかな。
私も実写版があまりに素晴らしかったから、「ええ~っ!?なんでいまさらアニメにするの??」と思ってみていませんでした。
でもkenさんのレヴューを読ませていただき、気持ちが変わってきました。
by Sho (2009-05-05 20:11)
まさに「食わず嫌い」でした。オススメですよ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-05-05 20:13)
こんにちは。
主人公のキャラクターの違いにびっくりした実写版とはかなり違う印象の作品でした。
アニメ版は主人公の明るくて無邪気なところが可愛かったです~
あのストレートな行動力がキラキラして眩しかったです☆
by non_0101 (2009-05-09 09:21)
主人公のキャラの違いは、間違いなく「時代」ですね。
でも、付いて行けて良かった~と思いましたw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-05-09 16:48)
この映画は良かったですね。
原作者の筒井康隆も絶賛していました。
この映画の細田守監督の新作「サマーウォーズ」は今年の夏公開ですね。
by きさ (2009-05-10 09:03)
きささん、詳しいですねえw
僕もこの1本で細田監督を注目するようになりました。
「サマーウォーズ」も楽しみです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-05-10 09:12)
kenさんコメント返し素早いですね。
細田監督は友人に聞いて注目してました。
「ハウルの動く城」は最初は細田監督だったそうです。
結局降ろされてしまいますが。
by きさ (2009-05-10 09:20)
えええ!すごい情報だw
by ken (2009-05-10 09:49)
ジブリ側としてはなかった事になっているらしいですが、、
by きさ (2009-05-10 14:02)
そりゃそうでしょうねw
by ken (2009-05-10 19:59)