ポリス・ストーリー3(1992年・香港) [2011年 レビュー]
原題:警察故事Ⅲ:超級警察 監督:スタンリー・トン
このシリーズ中、一番の出来映え。
皮肉なことに監督はジャッキーではなく、これが長編初監督作となるスタンリー・トン。
ちなみに初見だったために、ものすごく驚いたことがひとつあったが、それは後述。
東南アジアの麻薬を牛耳るマフィアを逮捕するため、香港警察のカークイ(ジャッキー・チェン)と中国人民武装警察部隊のヤン(ミシェル・ヨー)がタッグを組み、潜入捜査を行うという、刑事モノとしては王道だがジャッキー映画としては珍しい、まずまずシリアスな展開をする。
「プロジェクトA」以降、ジャッキー自身が監督をする作品は、ジャッキーの一人舞台というべき作品が多かった。毎回目玉となる派手なスタントを用意し、もしやストーリーは後付けなんじゃないかと思える作品を何本か観て、僕は「ジャッキー監督作品は『007』に似ている」と思った。
どんなことがあっても主役は一人。そして見せるべきものはドラマではなく、派手なアクション…。
これでは飽きる。だから007はときどき主役の首を代えて鮮度を保って来たが、ジャッキー・チェンは世界にただ一人である。だから観ていて辛くなる。
そんな中、今回はミシェル・ヨーを「相棒」として登場させた。この脚本とキャスティングは実に良いアイディアだと思った。僕の記憶が確かならば、ジャッキー初の女性とのタッグである。
ミシェルはバレリーナを目指していたというだけあって、そのカンフーはしなやかでキレがあって美しい。また激しいスタントもいくつか自身でこなしていて、観客を唖然とさせる。もちろんジャッキーのド派手なアクションも多数用意されていて、結果的に“両雄並び立つ”理想的な形になっている。この二人のアクションが両輪となり、作品にスピード感を与え、作品としてのクオリティを確保したと言っていいだろう。
特にクライマックス、ヘリコプターと列車上での数々のスタントは、ジャッキー作品の中でも1、2を争う出来映えである。
さてこの映画で僕が「ものすごく驚いた」のは、ジャッキーの地声を初めて聴いたからだ。
この時代の香港映画は製作期間の短縮や、広東語を話せない俳優の対策として、声優による吹き替えが基本だったらしく、ジャッキーの声もすべて吹き替えだったのだそうだ。
僕は本作でのジャッキーの声が妙に低音で驚いたのだけれど、見ればきちんとリップシンクしているし、それで何事かと思って調べてみたら、なんと初のシンクロ撮影だったようだ。いやこれまでの作品をもう一度見直してみたくなった。
ジャッキーへの恩義を忘れず、本作にも出演したマギー・チャンは当時28歳。1作目当時はまだ21歳で、ただの野暮ったい女の子だった彼女が、徐々に美しくなっていくその途中経過として本作を観ることも出来る。「花様年華」に出演するのは、この8年後である。そう思えばジャッキーもまだ若い。
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