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色即ぜねれいしょん(2008年・日本) [2011年 レビュー]

色即ぜねれいしょん」 監督:田口トモロヲ 脚本:向井康介

 「アイデン&ティティ」に続く、みうらじゅん×田口トモロヲのタッグ第2弾。
 前作同様、みうらじゅんの私小説を映画化したものだが、今回は楽しめた。それは本作が「童貞喪失を夢見る高校生のバカな妄想とシビアな現実」の物語に終始していたからだ。早い話が普遍的なテーマだったということ。ただし、この面白さは携帯電話が無い時代に青春ど真ん中だった世代でないと理解不能。つまり“アンダー40”はこの映画の客ではない、いうことだ。

 仏教高校1年生の純(渡辺大知)は優等生にも不良にもなれない中途半端な文科系男子。悶々とした毎日を送る中、同じく中途半端な友達から夏休みに隠岐島に行こうと誘われる。理由はこの島のユースホステルが、フリーセックスを楽しむ男女が集まるというウワサを聞きつけたからだった…。

 以前、資生堂のコピーに「一瞬も、一生も美しく」というのがあった。僕はこの見事なコピーに触れたとき、素直に「女子はいいなあ」と思った。なんというか人間の生き様としてキレイだ。
 男の場合こうはいかない。男の生涯をコピーにするなら「一瞬も、一生も馬鹿」である。特に高校時代は「底抜けに馬鹿」である。そしてエロに対する執着はきっと男の一生の中でマックスの時代だろう。童貞の高校生は、空腹のライオン並みに手がつけられない。だからおかしな行動に出て、笑いの種になる。

 「ユースホステルに“好き者”が集う」は、当時の都市伝説だろう。僕の周りでもそんなウワサ話があった。でもそこへ行って見た者も、経験した者もいない。だから今オーバー40の男たちは、この映画が懐かしくて笑ってしまう。ただし観終わったあとの読後感は複雑だ。観客は純の“ひと夏の経験”を笑いながら、自分との決定的な違いを見つけてしまうからだ。
 それは「馬鹿は馬鹿でも、行動に起こした馬鹿のほうが、人生は100倍楽しい」という事実である。
 僕は20歳を過ぎてから「迷ったときは笑える方を選べ」という座右の銘を師匠からもらって、心の糧にしているけれど、この言葉を高校の入学式で聞いていたら、僕の人生はちょっと違っていたんじゃないかと思う。少なくとも純は行動に移したからこそ、いま「みうらじゅん」として存在しているのだと改めて思った。

 馬鹿な高校生の行動を笑ったあとで、ちょっと恥じる自分の青春。
 個人的には純が中学時代の初恋の相手に、公衆電話から電話を掛けるシーンが気に入った。なんとか会う約束を取り付けたのに、「今週ダメだから、また来年の文化祭で」と純が言われるシーンは、似たような自分の経験を思い出して笑ってしまった。

 ターゲットは狭いけれど、僕たちの世代にはいい青春映画。

色即ぜねれいしょん [DVD]

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色即ぜねれいしょん (光文社文庫)

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コメント 4

Sho

面白いタイトルだなあ・・と思っていましたが、なるほど、そういうお話でしたか。
話がずれてしまい申し訳ないのですが、「一瞬も、一生も美しく」は確かに素晴らしいコピーでしたね。全角度的に資生堂らしいですが。
これはやっぱり「こうありたいな」という理想ですよね。
男の生涯が「一瞬も、一生も馬鹿」というのは、なんだかわらえるし、悲しくもあり、可愛くもありと思いますが、女のほんとの生涯は「一瞬も意地悪、一生も意地悪」な気がします。
レビューを読ませていただきながら、「当時の青春」を思い出していました。
by Sho (2011-06-25 00:22) 

ken

僕は女性のホントの生涯が意地悪だなんて、考えたこともありませんでした。
そう聞いても、そうだとは思えませんけどね。
それは僕が能天気だからでしょうかw
by ken (2011-06-25 22:12) 

CORO

ちょっととぼけていて、でも瑞々しい作品でした。
空回りしない青春なんて、そんなの青春じゃない!ということで、
女の人もそれなりにジタバタして、後で落ち込んでますよ^^;
by CORO (2011-06-29 00:37) 

ken

僕はみうらじゅんの曲の「青春ノイローゼ」というタイトルが大好きです。
これって100年後も通用するコピーだと思うんですよね。
青春時代ってどうしてあんなにどうでもいいことにクヨクヨしてたんだろうw
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-06-29 01:58) 

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