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大東亜戦争と国際裁判(1959年・日本) [2011年 レビュー]

監督:小森白 脚本:舘岡謙之助 主演:嵐寛寿郎

 まるで歴史書のようなタイトルは、戦後14年目の新東宝作品。
 当時の新東宝は戦争モノがお家芸だったらしく、そうとは知らずに僕も「戦艦大和」(1953)、「人間魚雷回天」(1955)、「太平洋戦争 謎の戦艦陸奥」(1960)を観ていた。もちろんこの他に何本もある。
 主だったところを並べると、「潜水艦ろ号未だ浮上せず」(1954)、「軍神山本元帥と連合艦隊」(1956)、「明治天皇と日露大戦争」(1957)、「天皇・皇后と日清戦争」(1958)、「明治大帝と乃木将軍」(1959)など。
 中でも近代天皇を嵐寛寿郎が演じることで話題となった「明治天皇と日露大戦争」は空前絶後の大ヒット作となり、44年後の2001年に「千と千尋の神隠し」が2,300万人の動員記録を作るまで、観客動員記録1位(2,000万人)だったというから驚きだ。

 本作は“ドル箱スター”嵐寛寿郎に東条英機を演じさせた戦争映画。 
 タイトルの「国際裁判」とは正式には「極東国際軍事裁判」、通称「東京裁判」を指すもので、本編は裁判の再現に時間の大半を費やしている。序盤の30分で大東亜戦争の大筋をさらい、その後60分かけて裁判の模様、最後の10分で死刑判決を受けたA級戦犯たちの様子を見せている。
 公開当時はGHQによる占領が終わって、すでに7年経っていたこともあり、東京裁判の不当性が明確に描かれている。その最たる例は「米軍による原子爆弾の使用が不問にされていること」だ。
 「不平等裁判」とは聞いたことがあったけれど、米軍および連合国にとって都合の悪いことはすべて却下され、議論することも証拠採用されることもなかった有様はいまさら驚かされる。当時も本作で「東京裁判の実情」を知ったという国民も大勢いたのではないか。
 僕自身は、判事の一人でインドの法学者パール判事が、「全員無罪」とした意見書(通称パール判決書)を提出していたことを、恥ずかしながら今回初めて知った。

 僕がこの手の作品を進んで観る理由は、「この年代の日本人が、戦争映画にどんなメッセージを籠めたか」が知りたいからだ。欲を言えば、当時の日本人にどう受け入れられたかも知りたいのだけれど、それにしてはあまりに時間が過ぎていて、情報を得るのは難しい。
 僕は本作を観て、いまさら1983年に公開されたドキュメンタリー映画「東京裁判」を観ようと決めた。劇中、日本側弁護団の副団長兼東条英機の主任弁護人を務めた清瀬一郎を佐々木孝丸が熱演しているが、ここでのカロリーがホンモノだったのかどうかなど、確認してみたいことがいくつもある。それ以上に僕はまだまだ先の大戦のことを知らな過ぎると思った。「大東亜戦争」という呼称が、GHQによって使用禁止になったこそすら、僕は最近まで知らなかったのだ。
 大いに反省。

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midori

極東国際軍事裁判の不当性については、いろんな人が書いてますが、
今だと藤原正彦の新書あたりが、とっつきやすいかもしれないですね。
by midori (2011-09-01 09:44) 

ken

お、情報ありがとうございます!
「東京裁判」を観たあとに読んでみます。
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-09-01 10:03) 

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