イップ・マン 序章(2008年・香港) [2011年 ベスト10]
原題:葉問/IP MAN 監督:ウィルソン・イップ 脚本:エドモンド・ウォン
タイトルロールはブルース・リー唯一の師匠にして、中国武術“詠春拳”の達人、イップ・マン。
カンフー映画である。しかしこれまでのカンフー映画とはまったく趣が異なっている。その最大のポイントは、主人公が血気盛んな若者ではなく、妻子を持つ落ち着いた男性である点だ。
1930年代の広東省佛山。
多くの武術家が道場を開く土地で、家族と共に平穏に暮らすイップ・マン(ドニー・イェン)。彼は道場も弟子も持たなかったが、武術家として優れ、人格者でもあったことから、人々から「師匠」と慕われていた。
やがて日中戦争が勃発。イップ・マンの家は日本軍に没収され、一家は貧しい生活を強いられることに。そんな中、日本軍の将校、三浦(池内博之)がイップ・マンの実力を認め、日本兵に中国武術を指導するよう迫る…。
ドニー・イェンのカンフーが実に美しい。本作はこの一言に尽きる。
その美しさは、単にテクニックとしてではなく、イップ・マンの“生き様”が大きく影響している。彼の物の考え方、言葉の選び方、行動の起こし方、いずれも徳を積んだ人でなければ出来ない“立ち振る舞い”が、カンフーを美しく見せているのだ。その流れるような美しさと清々しさは、まるで清流の如きである。
また面白いことにイップ・マンは最後まで上着を脱がなかった。もしやカンフー映画の主人公で、その肉体を誇示しなかったのはイップ・マンが初めてではないか。
肉体だけではない。ブルース・リーやジャッキー・チェンに比べると顔だって地味だ。ドニー・イェンは「カンフーの達人」と言うより「善良な一市民」と言った風情である。ところがいざ手を合わせると、一片の無駄も隙もないカンフーを繰り出すのだから、観客は皆イップ・マンの虜になる。こんなにスマートなカンフー映画は観たことがない。
一方で強烈な反日映画である。
観る世代によっては不快感も湧くだろう。しかしここは「中国人の積年の恨み」とあきらめて観るしかない。それよりも敵役を引き受けた池内博之に拍手を送りたいくらいだ。
「メガネに出っ歯」という日本人蔑視のイメージを体現した渋谷天馬も良かった。嫌われ役はとことん嫌われてこそドラマで際立つ。その仕事を見事にこなしていたと思う。
イップ・マンは実在の人物でも、ストーリーはフィクションである。
例えば、イップ・マンの自宅を没収したのは実際は中国共産党だが、本編に中国共産党は一瞬たりとも出て来ない。中国映画だから当然である。
そう言いつつ、登場人物の関係性はなかなか良かった。
正義のイップ・マン、絶対悪の日本軍、そして愚者の強盗団。この三すくみ構造は物語に厚みを持たせることが出来て良かったと思う。欲を言えば強盗団の頭、金をもっと上手く使いこなして欲しかった。
カンフー映画ファン必見。川井憲次の音楽も出色。第2作ももちろん観る。
タイトルロールはブルース・リー唯一の師匠にして、中国武術“詠春拳”の達人、イップ・マン。
カンフー映画である。しかしこれまでのカンフー映画とはまったく趣が異なっている。その最大のポイントは、主人公が血気盛んな若者ではなく、妻子を持つ落ち着いた男性である点だ。
1930年代の広東省佛山。
多くの武術家が道場を開く土地で、家族と共に平穏に暮らすイップ・マン(ドニー・イェン)。彼は道場も弟子も持たなかったが、武術家として優れ、人格者でもあったことから、人々から「師匠」と慕われていた。
やがて日中戦争が勃発。イップ・マンの家は日本軍に没収され、一家は貧しい生活を強いられることに。そんな中、日本軍の将校、三浦(池内博之)がイップ・マンの実力を認め、日本兵に中国武術を指導するよう迫る…。
ドニー・イェンのカンフーが実に美しい。本作はこの一言に尽きる。
その美しさは、単にテクニックとしてではなく、イップ・マンの“生き様”が大きく影響している。彼の物の考え方、言葉の選び方、行動の起こし方、いずれも徳を積んだ人でなければ出来ない“立ち振る舞い”が、カンフーを美しく見せているのだ。その流れるような美しさと清々しさは、まるで清流の如きである。
また面白いことにイップ・マンは最後まで上着を脱がなかった。もしやカンフー映画の主人公で、その肉体を誇示しなかったのはイップ・マンが初めてではないか。
肉体だけではない。ブルース・リーやジャッキー・チェンに比べると顔だって地味だ。ドニー・イェンは「カンフーの達人」と言うより「善良な一市民」と言った風情である。ところがいざ手を合わせると、一片の無駄も隙もないカンフーを繰り出すのだから、観客は皆イップ・マンの虜になる。こんなにスマートなカンフー映画は観たことがない。
一方で強烈な反日映画である。
観る世代によっては不快感も湧くだろう。しかしここは「中国人の積年の恨み」とあきらめて観るしかない。それよりも敵役を引き受けた池内博之に拍手を送りたいくらいだ。
「メガネに出っ歯」という日本人蔑視のイメージを体現した渋谷天馬も良かった。嫌われ役はとことん嫌われてこそドラマで際立つ。その仕事を見事にこなしていたと思う。
イップ・マンは実在の人物でも、ストーリーはフィクションである。
例えば、イップ・マンの自宅を没収したのは実際は中国共産党だが、本編に中国共産党は一瞬たりとも出て来ない。中国映画だから当然である。
そう言いつつ、登場人物の関係性はなかなか良かった。
正義のイップ・マン、絶対悪の日本軍、そして愚者の強盗団。この三すくみ構造は物語に厚みを持たせることが出来て良かったと思う。欲を言えば強盗団の頭、金をもっと上手く使いこなして欲しかった。
カンフー映画ファン必見。川井憲次の音楽も出色。第2作ももちろん観る。
iTunes Storeでもレンタル出来ますよ。楽しんで下さい!
by ken (2011-10-13 08:52)
武道とか、太極拳とか、○○拳とか、そういうものは、あるレベルを超えると
ものすごく美しいものなんでしょうね。というか、もともとが美しいんだろうなあ・・と思います。
で又、人間がそれに比例するようにできていくんですかね。
地味な顔の師匠の、類稀なる美しい動きをみてみたいと思いました。
by Sho (2011-10-15 12:24)
本当に風か清流のように流れるカンフーでした。
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-10-15 13:38)
あー既にご覧になさっていたようでどうもすいませんでした。<(_ _)>
ドニー・イェンのアクション最高でした。
続編も見ます。すぐに。
by 芸夢人 (2012-04-02 15:28)
spikaさん、お久しぶりです。しかも亀レスでスイマセン。
「捜査官X」ですか。このタイトルは観ていませんね〜。
機会を見つけていつか観てみたいと思います。ご紹介ありがとうございます!
by ken (2012-11-17 21:47)
「捜査官X」の予告編を観ました。
ドニー・イェンの美しい技が観られそうで楽しみです。
by ken (2012-11-19 10:55)