白いカラス [2004年 レビュー]
「白いカラス」(2003年・アメリカ) 主演:アンソニー・ホプキンス、ニコール・キッドマン
僕は何の予備知識もなくこの作品を観ました。それが結果正解だったと思う。
僕は何の予備知識もなくこの作品を観ました。それが結果正解だったと思う。
この映画には僕の好きなエド・ハリスとゲイリー・シニーズが出ていたので最後まで楽しめたのだけど、期待したほどドラマティックじゃなかった。
どうしてこんなに淡々としたドラマなんだろう?って不思議に思ったら、「クレイマークレイマー」の監督だった。なるほどね。
インタビュー [2004年 レビュー]
「インタビュー」(2000年・韓国) 主演:シム・ウナ、イ・ジョンジェ
シム・ウナ最後の作品。
シム・ウナ最後の作品。
以前から見たくて見たくて、最悪は買ってでも見ようかと思ったくらい見たかった映画でもある。
その理由は単純にシム・ウナを見たかった、というだけ。
彼女は「サランヘヨ あなたに逢いたくて」、「八月のクリスマス」、「美術館の隣の動物園」、「カル」、そしてこの「インタビュー」と生涯で5本の映画にしか出演していない。僕が観ていないのは今日でデビュー作のみになった。
アジア初のドグマ95映画に指定された作品であるらしいが、僕はドグマ95そのものに興味がないのでここでは詳しく書かない。(興味があるなら、こちら)
単純にひとつの作品として評価するなら、編集を複雑にしているためにストーリーが難解になっている。
もっともっと判りやすく作れたはずのものを、監督のエゴで複雑怪奇なものにしたような気がしてならない。
映画はアートだ。しかし、エンタテインメントでもある。
プロデューサーという立場から言えば、制作費を回収できない映画は自主フィルムと同じく監督のマスターベーションでしかない。
(ここまで僕が冷たく言う理由は、僕がプロデューサーであってパトロンじゃないからだ)。
この映画に対する評価は低い。
なぜシム・ウナはこの作品に出演を決めたのか、その理由すら読めない。
しかし、シム・ウナは文句なしに美しい。彼女の姿を見るだけで僕には充分。しかも彼女の最後の作品というだけでコレクションする意味がある(笑)。
でも僕は買わない。ここで買わないと言わせるほど、この映画は面白くない。
ブラザーフッド [2004年 レビュー]
「ブラザーフッド」(2004年・韓国) 主演:チャン・ドンゴン、ウォンビン
韓国史上最大の制作費(137億ウォン:日本円で約14億円)が掛けられ、本国では3人に1人が観たと言う大ヒット作。
韓国史上最大の制作費(137億ウォン:日本円で約14億円)が掛けられ、本国では3人に1人が観たと言う大ヒット作。
朝鮮戦争に参加した一組の兄弟の物語なんだけど、個人的には戦争映画ってなに観ても一緒になって来た。
この映画も戦闘シーンのすさまじさが何かと話題になっていたけれど、戦闘シーンの再現はもはや「ただの殺し合い」にしか見えない。
でも、戦争になど加わりたくなかったはずの一般市民が、なぜ人を殺すように(しかも同胞を)なってしまったかは、うまく描けていると思う。
作品の後半で見せる兄の「予想もしなかった生き様」はまさにその典型だ。
ストーリーの展開上避けられないから戦闘シーンがあるのなら、それはいい。しかし必要以上に作りこまれているのではないかと言う気がしないでもない。
朝鮮戦争はアメリカと中国の代理戦争だ。僕はこの大きなうねりに巻き込まれた小石に置き換えて兄弟を描いていたらもっと良かったのかも知れない、と思う。
劇中アカ狩りのシーンがあるだけに、それこそ重要なポイントではなかったか。
もちろん地元韓国の人たちにはそういった知識のベースがあるからその部分を描く必要はないのかも知れないけれど、韓国映画も海外マーケットを目論んで作るなら、そのレベルの配慮はそろそろあってもいい。
エンディングはドラマティックでよかったけれど、意味のわからないところもあった。
ウォンビンもいい。デビュー作(ガン&トークス)から比べたら格段に芝居が巧くなっている。ストーリーというよりも彼の芝居で泣かされた。
サンダーバード [2004年 レビュー]
それは東の「キャシャーン」、西の「サンダーバード」である。しかし僕は劇場で観ていない。では観てもいないのになぜヘタレと言い切るのか、
①オリジナルは歴史に残る名作である、②リメイク作の劇場版は思いのほか早く打ち切られた、③結果、いい評判を聞かない。
これくらいの理由があればもう充分「ヘタレ」映画と言えるでしょう?
ま、今回はその確認のために観るんですけど。
僕が「サンダーバード」を観に行かなかった決定的な理由は、サンダーバード2号のデザインが原作と違いすぎたこと。これは許しがたいほど違っていた。
ま、今回はその確認のために観るんですけど。
僕が「サンダーバード」を観に行かなかった決定的な理由は、サンダーバード2号のデザインが原作と違いすぎたこと。これは許しがたいほど違っていた。
ユニフォームが青じゃなくて白だったのも理由のひとつに数えられる。
リメイク作品はどこまでオリジナルに擦り寄るか、その線引きが難しいところではある。一番大切な仕事と言っていいかもしれない。
例えば「バットマン」。オリジナル版と映画版とではその質感と世界観が大きく異なっている。けれど成功した。その最大の理由は、監督のティム・バートンが「子供向けテレビ映画」を大人も楽しめるエンターテインメントに昇華させたことだ。
サム・ライミの「スパイダーマン」も、自分を含めかつて子供だった世代も楽しめる大人のドラマにしたい、という思いが強いからこそ、バランスの取れた作品に仕上がっているのだ。
しかし、オリジナル作品に対する観る側の思い入れが強ければ強いほど先の「線引き」作業は難しい。
主人公の衣装はヒーローモノでは最重要課題である。過去を捨てたのがバットマンで、過去を尊重したのがスパイダーマンだ。
尊重したスパイダーマンはさておき、ではなぜバットマンは過去のスーツデザインを捨てたのか?。その理由は判らない。しかしオリジナルのカラフルなスーツでは、ティム・バートンの世界にはなり得なかった。ここにはクリエイターの意思がある。
「サンダーバード」にそれはなかったと思う(驚いたことに監督のジョナサン・フレークスは「スタートレック」のライカー副長その人であった)。
絶大な人気を誇った作品に負けて、本編を自分の色に染めることが出来ていない。悪く言えばリメイク作品に対する明確なビジョンがないのだ。
その証拠①ストーリーがまったくなっていない、②キャスティングに魅力がない。
僕がプロデューサーならまず企画の段階からシリーズ作品としてプランを組み立てる。
そのプランで言うなら、1作目である今回はトレーシー兄弟とサンダーバード1号から5号までのプロフィールを丹念に描く必要がある。
それ以前に、国際救助隊がなぜ生まれることになったのか、肝心要の「原点」がストーリーには必要なのにそこはまったく無視されているのだ。
さらにキャスティングがあまりにも貧弱で登場人物に興味すら持てない有様。
この作品は単なる子供向けの冒険ドラマ(にもなっていないのだけど)でしかない。僕から言わせれば監督は即刻クビ。脚本家もクビ。プロデューサーは自分でクビだ。
まったく残念で仕方がない。
この映画で唯一褒められたのは、ハンス・ジマーの音楽だけ。
映画「バックドラフト」のコンポーザーとして日本では有名だけれど、「ライオンキング」でアカデミーを受賞し、「ラストサムライ」も彼の仕事。
驚いたことにハンス・ジマーは元バグルズのメンバーで1982年「ラジオスターの悲劇」をヒットさせていた、その人でもあった。
パンチドランク・ラブ [2004年 レビュー]
「パンチドランク・ラブ」(2002年・アメリカ) 監督:ポール・トーマス・アンダーソン
「マグノリア」の監督だ。
それが「強烈な一目惚れ」映画を撮った。直球な映画かと思ってみてみたら、ものすごい変化球だった(笑)。
「マグノリア」の監督だ。
それが「強烈な一目惚れ」映画を撮った。直球な映画かと思ってみてみたら、ものすごい変化球だった(笑)。
ピッチャーの手元を離れた瞬間から直球じゃないことが判った。狂ったようにグルグル変化している。主人公のバイオリズムと同じくらいにグルグルと。
4人の姉を持つ末っ子の長男。トイレの詰まりを直す「スッポン」を売る青年実業家。ただし、ときどきキレる。なのにシャイ。だからガールフレンドもいない。
そんな男が離婚歴のある女に一目惚れする。しかしその女も男の姉に見せられた写真で一目惚れをしているという設定だ。
そんな不思議ちゃんキャラを「クレイドル・ウィル・ロック」のエミリー・ワトソンが演じている。このキャスティングはなかなかだ。
しかし脚本はまだまだ修正の余地があったと思う。
一番は姉たちの登場が遅くてもったいない。登場シーンも少ない。男が子供の頃にハンマーで自宅の窓をぶち壊したエピソードも、もっと早い段階で紹介されて、キレキャラであることも早々とアピールすればもっと面白い展開になったのではないか。
それにしてもオルガンのエピソードだけが、なぜ挿入されていたのか最後まで意味が判らなかった(笑)。
マルコビッチの穴 [2004年 レビュー]
「マルコビッチの穴」(1999年・アメリカ) 監督:スパイク・ジョーンズ 脚本:チャーリー・カウフマン
ま、「アダプテーション」とは順番が逆になっちゃったんですけど、観てみたわけで。
ま、「アダプテーション」とは順番が逆になっちゃったんですけど、観てみたわけで。
そもそも僕は不条理コメディというものがあまり好きではなく、それが決定的になったのは確か18歳のときだったと思う。
飯田橋にあった「佳作座」という劇場で「モンティパイソン・アンド・ナウ」と「空飛ぶモンティパイソン」を観たことが原因になっている。
それはもっと子供の頃にマンガ「がきデカ」を読んだとき以上のショックで、がきデカの展開もそうだったのだけれど、特にモンティパイソンの場合は僕の中にあった「常識」を遥かに超えていたために、目の前で繰り広げられる事態をまったく理解することが出来ず、途中で頭痛と吐き気をもよおしたのだ(実際に劇場で吐いた気がする)。
佳作座にかけられていたモンティパイソンの映画は3本立てだったけれど、前出の2本しか観ていない。いや正しくは2本目の途中で劇場を出たので、3本目のタイトルは記憶にない。
不条理コメディは子供に見せるものじゃないと、つくづく思ったものだ。
けれど、「マルコビッチの穴」は素直に楽しめた。「そんなことあるわけないじゃんという否定は、ここではナンセンスだ」と思うことも出来た。
個人的なことに言い換えるなら「ちょっとした成長」である。
しかし、ちょっと待て。この「マルコビッチの穴」を僕が素直に楽しめたのは、これが「大きな嘘」であるからだ。
かつてここにも書いたけれど倉本聰さんの言葉がふと蘇る。
「ドラマを作る上で大きな嘘はついてもいいが、小さな嘘はついてはいけない」
なるほど。そういうことなのだ。
ボーン・アイデンティティー [2004年 レビュー]
「ボーン・アイデンティティー」(2002年・アメリカ) 主演:マット・デイモン
「オーシャンズ11」でマット・デイモンをはじめて見た僕は、こんな中途半端な役者を主役に据えて、しかもその映画がヒットしたという事実をまったく理解できずにいた。
「ボーン・アイデンティティー」はこの2年間くらい、ずーーーっとあらゆるレンタルショップで必ず目に付く場所にあり、年間レンタルランキングの上位に入っていた作品なのだ。それはもしかしたら映画会社や販売元の力なのか判らないが、とにかく僕の視界に入り続けること約2年になってしまったので、さすがに観念して観てみることにした。「きっと面白いんだろうな?」と憎まれ口を叩きながら。
「オーシャンズ11」でマット・デイモンをはじめて見た僕は、こんな中途半端な役者を主役に据えて、しかもその映画がヒットしたという事実をまったく理解できずにいた。
「ボーン・アイデンティティー」はこの2年間くらい、ずーーーっとあらゆるレンタルショップで必ず目に付く場所にあり、年間レンタルランキングの上位に入っていた作品なのだ。それはもしかしたら映画会社や販売元の力なのか判らないが、とにかく僕の視界に入り続けること約2年になってしまったので、さすがに観念して観てみることにした。「きっと面白いんだろうな?」と憎まれ口を叩きながら。
記憶を失った秘密工作員のハナシだ。ありがちというか、これまでに何度もあった設定だ。でも面白い。マット・デイモン悪くない(笑)。
何度でも似たような設定で物語が作られるということは、それなりに需要があるという証なんだろうなあ。
後半展開が読めちゃうけど、期待しないで観た分「やるじゃん」って思っちゃいました。
何度でも似たような設定で物語が作られるということは、それなりに需要があるという証なんだろうなあ。
後半展開が読めちゃうけど、期待しないで観た分「やるじゃん」って思っちゃいました。
オーシャンと11人の仲間 [2004年 レビュー]
「オーシャンと11人の仲間」(1960年・アメリカ) 主演:フランク・シナトラ
オーシャンズ12がいよいよ公開される。
オーシャンズ12がいよいよ公開される。
と、その前に僕の友人が「意外とおもしろい」と言っていた、元の作品を観てみることに。
ところが…全然おもしろくない。しかも呆れるほど長い。この映画のいったいどこが面白いんだ???
あ~そういえば、この映画を面白いと言った僕の友人は劇場版「チャーリーズ・エンジェル」の一作目も面白いと言っていた奴なのだ。信用した僕がバカだった(笑)。
ただ唯一、「アパートの鍵貸します」でブレイクする直前のシャーリー・マクレーンがチョイ役で出演していて、その姿だけはとても可愛かったです。
フィラデルフィア [2004年 レビュー]
「フィラデルフィア」(1993年・アメリカ) 監督:ジョナサン・デミ 主演:トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン
先日、映画「ポーラー・エクスプレス」のPRのために来日していたトム・ハンクス。
先日、映画「ポーラー・エクスプレス」のPRのために来日していたトム・ハンクス。
「アメリカの良心」と言われる彼の評価を作り上げた最初のキャリアが「フィラデルフィア」だ。
僕はこれまでにも何度かこの作品を観ようと何度もレンタルしておきながら何度も観そびれてきた。もちろんそれにはワケがある。
法廷劇でかつ長尺であること。そしてテーマが重いこと。劇場公開当時の93年はもっともっと重く感じるテーマだったと思う。
11年後の今になってはじめて見ている僕には、エイズという不治の病に対する当時の混乱振りが逆に新鮮だった。
ストーリーに激しいうねりもなく、法廷劇でありながらスカッと心が晴れる演出もないのだけれど、その静かな展開が客観性を際立たせていて、逆に監督の手腕を感じる。
等身大の弁護士を演じたデンゼル・ワシントンもいい。
トム・ハンクスは言うに及ばない。アカデミー賞に相応しい。
トム・ハンクスは言うに及ばない。アカデミー賞に相応しい。
船を降りたら彼女の島 [2004年 レビュー]
「船を降りたら彼女の島」(2002年・日本) 監督:磯村一路 主演:木村佳乃
僕の地元でもある愛媛県を舞台にした映画「がんばっていきまっしょい」(主演:田中麗奈)の監督、磯村一路の愛媛映画第2弾。
僕の地元でもある愛媛県を舞台にした映画「がんばっていきまっしょい」(主演:田中麗奈)の監督、磯村一路の愛媛映画第2弾。
このタイトル、悪くないと思う。だけどはっきり言ってこの映画は駄作です。とにかく長い!長くて長くて前半の1時間で嫌になる。
東京に住む娘が結婚報告をするために故郷の島に帰って来る。しかし両親になかなか言い出せない…。ただそれだけを延々と110分もかけて見せるのだ。
一体どこの誰がこんな映画を作らせたのか不思議でしょうがない!と、「あずみ」以来のお怒りモード(笑)。
日本映画(監督)の悪いところは、小津安二郎の「風味」だけを真似てそれを「良し」としているところで、ルーズで長回しで撮ったカットを淡々と編集する。
しかも「これこそが映画の味」と自己満足しているところだ。まったくお前たちバカ言うな、である。
一本も撮ったことのない僕が偉そうに言えた義理ではないけれど、この監督カット割りは下手だ。絶対にヘタ。
松山や島々のいいところも出し切れていない。そんなカットのオンパレードで本当に悲しい。
あと、地元の人間だから気になるのだけど、伊予弁をうまく喋れない役者の芝居を見るのはつらいね。方言指導も、もう少し徹底してやるべきだと思います。ホントに。