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女はみんな生きている [2006年 ベスト20]

女はみんな生きている」(2001年・フランス) 監督・脚本:コリーヌ・セロー

 原題はCHAOS(カオス=混沌)です。
 このタイトルもどうかと僕は思うんですが、日本版はそれ以上にセンスの無いタイトルが付いちゃってます。…センスゼロの邦題は見なかったことにしてさっそく本題に入りましょう。
 「久しぶりにおもしろい映画と出会いました」
 きっかけはrosemaryさんの記事です。とても勢いのいい記事だったので、その勢いに乗って僕も観てみたのですが、これは見事にエスプリの効いた作品でした。

 道端で3人組の男に暴行される娼婦を目撃した主婦のエレーヌは、その娼婦の安否が気になって翌日病院を訪ねる。見つけた娼婦は重体で意識もなく、家族の存在すら分からない。そこでエレーヌは仕事も休み、自宅にも帰らず、娼婦の面倒を見ようと決意する。
 しかしその娼婦は組織に追われる身だった。入院した翌日には不審な男たちが病院にやって来る…。

 脚本が良く出来ているんですよ。コレって。
 基本的には女と男の対立構造が軸になっているのですが、そのパターンが多彩になんです。
  母親と口をききたがらない息子。
  愛のなくなった妻と夫。
  二股をかけられている女と、優柔不断な男。
  娘を金に換えようとする父。
  ヤクザと娼婦。
  その娼婦と年老いた富豪。
  騙す女とその気になる男たち。
 こんないくつもの関係がたった112分のなかに散りばめられていて、それがきちんとひとつの話に収束して行くんです。後半の20分はその手際良さに感動して笑ってしまいました。Tresbien ! 
 
 ジャンルで言うなら、コメディの要素も含んだサスペンスドラマ。言葉を換えれば、女流監督による痛快な女の物語です。だからこの映画は女性同士で観るのが一番いい。観終わったあとでそのお友達とお茶しながらいろいろ話すのが「正しい『CHAOS』の楽しみ方」だと思います。
 女性が撮った女性の映画だから男には面白くないかと言うと、そんなことはありません。男も充分に笑えます。いい感じにコケにされてますから(笑)。でも奥さんや彼女と一緒に見るときは要注意。ヘンなところで苦笑いしたり、黙りこくっちゃったりすると、「あら?ワタシに何か隠し事でもある?」ってことになりかねません。男性はこっそり1人で見て「あー、あるある」と呟きましょう(笑)。個人的には女性からの電話を待っている夫の描写がかなり笑えました。

 女性が撮った女性の映画で最近思い出すのは荻上直子監督の「かもめ食堂」ですが、この作品には「かもめ食堂」を髣髴とさせるシーンがひとつあります。これは見てのお楽しみ。

 女と男が対立する物語って、良く出来た作品は本当におもしろい。
 女性には文句なしにオススメ出来る1本です。

女はみんな生きている

女はみんな生きている

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2004/06/11
  • メディア: DVD

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SAYURI [2006年 ベスト20]

SAYURI」(2005年・アメリカ) 監督:ロブ・マーシャル 主演:チャン・ツィイー

 日本人はこの作品を誤解しないほうがいい。
 「日本のことをロクに理解していないアメリカ人が作ったウソだらけの映画」と非難するのは自由だが、それは深慮を欠いた愚かな行為だ。
 「SAYURI」は世界中でただ日本人だけが「これはアメリカ産の映画だ」と認識して見なければならないが、その余計な意識さえ捨ててしまえば実に完成度の高い作品としてその目に映るだろう。

 セリフは全篇英語。主要キャストは中国人。もちろん違和感はある。しかし単純明快なストーリーと、これが長編2作目とは思えないロブ・マーシャルの演出力、そして3人の中国人女優(特にコン・リー!)の見事な演技が、ヘタな先入観の一切を吹き飛ばしてくれるのは間違いない。
 事実、僕は146分という上映時間に一度は躊躇した。さらに「違和感があるようなら日本語吹き替え版で観よう」とも決めていた。しかし僕はオープニングからまもなく総てを忘れて没頭した。エンディング間近で軽く失速はするものの「長い」とは一度も思わなかったし、英語セリフを「気持ち悪い」とも思わなかった。当然これには理由がある。
 日本人にとってまずラッキーだったのはサユリ、豆葉、初桃という3人の芸者をチャン・ツィイー、ミシェル・ヨー、コン・リーが演じたことだ。我々日本人はアメリカ人の観客と違って彼女たちが中国人女優であることを知っている。だからこそ彼女たちが日本語セリフを口にしていたら逆に違和感があったと思う。個人的には字幕に慣れているせいもあるだろう。しかし役者が話す言葉が例えどの国の言葉だろうと、僕が日本語使いである以上僕の心に届く声は日本語なのだ、と思った。
 
 長さを感じさせなかった要因は先にも書いた通りストーリーがとても判りやすく、それでいてブレが一切無いからなのだが、忘れてならないのは上映時間146分中、チャン・ツィイーが登場するまでのおよそ40分間を引っ張った子役の存在だ。
 大後寿々花。
 「北の零年」でスクリーンデビューし、その才能に惚れ込んだ渡辺謙の推薦もあって今回出演が決まったというこの小さな女優の演技力は見事だった。その昔NHKで放送されたドラマ「おしん」の小林綾子を思い出す。あのドラマも小林綾子がいたからこそ大ヒットした作品だった。大後寿々花が演じたのは「サユリ」と名乗る前の「千代」だが、僕はタイトルロールを演じた一女優として記憶に留めたい。本編のラストカットを見ればきっと誰もがそう思うことだろう。この映画を締め括ったのは間違いなく彼女なのだから。

 ロブ・マーシャル。
 ミュージカル映画においてのみその才能が生かされるのかと思いきや、この作品の映像もバツグンに美しかった。舞台シーンの演出が優れているのは当然としても、謎めいた置屋街の明暗にこだわったカットの数々は「仮に潤沢な予算があったとしても日本人監督にこの映像が撮れるのか?」と思ったほどです(なんと、いま確認したら撮影のディオン・ビーブは本作でアカデミー撮影賞を受賞していました。素晴らしい!)。
 またアメリカ人による芸者映画でありながら、「芸者イコール娼婦ではない」という説明があるのは日本人として妙に嬉しかった。そこは確実に誤解されてると思いますからね。
 
 まとめ。
 監督は「シカゴ」のロブ・マーシャル。製作はスティーブン・スピルバーグ! 音楽はジョン・ウィリアムズ!! 主演はチャン・ツィイー!!! こんな人たちが集まってJAPANのGEISHAの話を作った!!!!
 それでいいじゃないですか。もっと楽しみましょうよ(笑)。
 個人的にはこのDVD、買いです。

 thanks! 240,000prv

SAYURI

SAYURI

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2006/07/05
  • メディア: DVD

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Dear フランキー [2006年 ベスト20]

Dear フランキー」(2004年・イギリス) 監督:ショーナ・オーバック 脚本:アンドレア・ギブ

 この映画、「ドカーン!」とか「バキューン×2!」とか「ぎゃあああ!」とか「そんなご無体な~!」とかいう映画が好きな人には向いてません。でも静かな映画が好きだと言う人にはオススメします。僕は海と海に近い町が好きなのでスコットランドのロケーションも気に入りました。

 9歳になるフランキーは母と祖母の3人暮らし。父はフランキーが小さい頃から「ACCRA号」という船で世界中を旅している。父と息子を繋ぐものは唯一、手紙のやりとりだけだった。
 …しかしこれはすべて母・リジーの作り話。父親を装って手紙を書いていたのもリジーだった。本当の父親は暴力を振るう男で、そんな夫から逃れるために息子を連れて家出をしていたのだ。
 そんなある日、家族が住む港町にホンモノの「ACCRA号」が寄港するという。フランキーは「お父さんに会える」と喜び、そんな様子に祖母は「そろそろ真実を話すべき」とリジーに忠告する。そしてリジーはある決意をする…。

 
静かな映画です。
 振り幅が大きくない(大きな事件が起きて一喜一憂することがない)ので、物語は淡々と進行するのですが、そこがこの作品の第一の魅力だと思います。
 例えば「シッピング・ニュース」や「かもめ食堂」も同じですが、この作品も町全体を揺るがすような大事件が起きるわけじゃありません。やがて登場人物の悩みを知るにつれ、観客は「自分でも力になってあげられるんじゃないか」と思うようになります。なぜならそれが、どこで誰の身に起きてもおかしくない等身大の悩みだから。こうして観客は映画の中の町の一員となり、作品を「体感」していくのです。早い話これが「ドラマに入り込む」ということなのですが、
僕はこの手の作品を「目で観る映画ではなく、身体で感じる映画」と勝手に呼んでいます。
 
 この映画に好感が持てるところは他に「悪人が出てこない」ところと、「キャスティング」と「衣裳」でしょうか。
 リジーを演じたエミリー・モーティマーは微妙な心の揺れ具合を繊細に演じていたと思います。とても素敵な女優でした。余談ですがこの人は「イン・アメリカ/小さな三つの願いごと」や「ハイジ」に出演した天才子役エマ・ボルジャーとそっくりで、僕はこの2人にぜひ親子役を演じて欲しいと思います(笑)。
 「オペラ座の怪人」のジェラルド・バトラーは、演じた“ストレンジャー”が特に難しい役どころでもなかったので、伸び伸びと演じていたように思います。
 フランキー役のジャック・マケルホーンもまずまず。子供が主役の作品は当然子役の力量に作品の出来不出来が関わってくるのですが、飄々とした風貌ながら父性をくすぐる味わいのある表情を見せてくれました。
 衣裳はリジーのスタイリングが良かったと思います。
 シーンごとの精神状態に合わせて選んだだろう数々のセーターにちゃんと生活感があって、中でもフェアアイル柄のセーターを着せたシーンがとても可愛らしくて僕は好きでした。
 脚本も良く出来ています。
 この作品は何の情報を持たずに見ても、ストレスを感じることなく最後まで観ていられると思います。これは事実関係の説明の仕方とそのタイミングが絶妙だったからでしょう。誰にでも分かるよう丁寧に構成された“脚本のお手本”です。

 唯一クライマックスの演出には不満が残りました。
 ストーリーは悪くない、でもバスの中のシーンはもっと泣けるシーンになったはずです。あそこはその前の郵便局のシーンからもう一度作り直してもいいんじゃないかと思いました(笑)。

 この作品は子供を持つすべての人にオススメします。

Dear フランキー

Dear フランキー

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • 発売日: 2006/01/27
  • メディア: DVD

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嫌われ松子の一生 [2006年 ベスト20]

嫌われ松子の一生」(2006年・日本) 脚本・監督:中島哲也

 1978年に「初恋編」(監督:実相寺昭夫、主演:薬師丸ひろ子)という作品がカンヌで金賞を受賞していることを知る人は意外と少ない。
 しかし知らないのも当然のハナシで、この作品は映画ではなくコマーシャルフィルムであり、“カンヌ”とは「カンヌ国際広告祭」のことだからだ。
 事情を説明すると、この作品はもともとカンヌの「賞獲り」を目指して作られた資生堂の180秒CFで、出品条件を満たすために(テレビコマーシャル部門に出品する以上、テレビで放映された作品でなければならない)ただ一度だけ放映された“幻のCF”な
のだ。
 僕が「初恋編」を見たのはカンヌの金賞受賞から3年後。当時通っていた映像関係の学校の「CM概論」という授業でこの作品が取り上げられたときだった。そのとき
講師がこんな話をしていた記憶がある。

 『CFの監督はほとんどの人間が30秒のCFしか作ったことがない。だからせいぜい頑張っても60秒を作るのが精一杯で、それを越える長編CMの場合は映画監督を起用するケースが多い。
 2時間の作品を作れる者は30秒の作品も作れるが、30秒の作品を作る者は1分以上の作品を作る“スタミナ”がないからだ』
 
 講師の言う“スタミナ”とは体力的なことではなく、構成力という意味である。
 マラソン選手にとって100メートルは通過点だが、短距離選手にとって42.195キロは力配分さえ分からない未知の領域とも例えた。
 そう聞いて当時ズブの素人だった僕は「そんなバカな話があるか」と思っていた。
 「30秒も3分
も大して変わらないじゃないか」
 しかし実際に作り手側に回ってみると、講師の言葉は事実だった。
 例えば15秒で完結する作品をメインに作ると、同作品の30秒タイプは間延びして気が抜けたような作品になった。その逆で30秒タイプをメインに作ると、15秒タイプの作品もなかなかの出来栄えになった。不思議に思えるかも知れないがこれは事実なのだ。こうして「映画監督にCMは作れても、CMディレクターに映画は作れない」は僕の中で定説になった。

 それから20年。
 確かに30秒の世界の人と、120分の世界の人とでは作るものが違う。
 「しかしそれはそれでいいのだ」
 僕は「嫌われ松子の一生」を観ながらそう思った。
 だってこの作品は120分の世界で生きてきた人には撮れないと思う(もしやれたとしたら鈴木清順監督くらいだろうか?ちきしょうだったら「オペレッタ狸御殿」見ておけば良かった)。それくらい特殊な世界を構築しているのだ。
 ストーリーは特に驚くような話じゃない。
 中学校の教師だった松子(中谷美紀)がひょんなことから転落していく人生を描いただけの話だ。ただそれだけなのにこの作品が圧倒的におもしろいのは、“人の不幸は蜜の味”であるのと、その不幸を彩るポップな映像が優れたCMのようにインパクトがあり、かつ美しく、それらをCMディレクターならではの絶妙の“間”で繋いでいるからだ。
 これから観ようという人は中島監督のプロフィールを確認したあとで観るといい。
 山崎努と豊川悦司が卓球やバーベキューで対決した「サッポロ黒ラベル」。まるでミュージカル映画のワンシーンだったキムタク主演の「JRA」。SMAPがガッチャマンに扮した「NTT東日本」。
 それぞれタイプの異なるCMだけど、「嫌われ松子の一生」を観るとそれが同一人物の手によって作られた作品であることが何となく分かる。別に分からなくてもいいけど(笑)。僕はそこに中島哲也監督のすごさを感じる。それは監督が“自分を信じて作品を作っている”からだ。だから譲れるところと譲れないところが明確で中谷美紀とも対立し続けていたのだと思う。
 その中谷美紀。
 彼女は本当に素晴らしい。
 「嫌われ松子の一生」は確実に中島哲也監督の私物だけれど、中谷美紀にだけ「アンタ一人の物じゃない」と言う権利がある。
 もちろん中谷美紀がいなくたってこの映画は完成したと思う。なんなら監督は柴咲コウに「松子」をやらせたかったかも知れない。でも中谷美紀で正解なのだ。何度も書くけど、柴咲コウは何をやらせても柴咲コウだし、絶対に「松子」にはなれなかったと思うからだ。いま思い返しても中谷美紀は中谷美紀じゃなかった。そこにいたのはホンモノの「松子」だった。
 130分間を飽きさせなかった要因はその他のキャスティングにもある。
 次から次へと現れる意外な顔ぶれ。そう言えば僕は先の学校で「演出の9割はキャスティングで決まる」とも教わった。この言葉にも偽りは無かった。

 普段テレビを主戦場にしている中島監督は、だからこそ映画では劇場のスクリーンで観たときのことを考えた絵作りをしているなと思いました。
 観るならぜひ劇場で。細部をチェックするといろんなモノを発見してなかなか面白いです。
 映画というよりも「娯楽アート」と呼びたくなる快作。

嫌われ松子の一生 通常版

嫌われ松子の一生 通常版

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • 発売日: 2006/11/17
  • メディア: DVD

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ブロークン・フラワーズ [2006年 ベスト20]

ブロークン・フラワーズ」(2005年・アメリカ) 監督・脚本:ジム・ジャームッシュ

 この映画は「観るなら独りで」と決めていました。
 だってそういう映画だから。
 
 そして申し訳ないんですけど、この作品は
 
「19歳の息子がいてもおかしくない中年の独身男が一番楽しめて一番泣ける映画」
 です。
 だから僕は面白かった。
 でも僕がビル・マーレイの年齢(56歳)だったら泣いていたと思います。多分、笑いながら。

 まず、そのビル・マーレイが抜群の演技を見せてます。上映時間の106分間は完全に「ビル・マーレイ ショウ」。
 口を開かずとも雄弁な表情と身のこなしは、素人に有無を言わせない圧倒的な存在感を放ち、彼のおかげで脚本以上のドラマに仕上がったと言っていい。
 本作の楽しみどころはいくつもありますが、その1はビル・マーレイ演じる「ドン・ジョンストンが今、心の奥で何を考えているかを探ること」です。
 “19歳の息子がいてもおかしくない中年の独身男”にとっては、実はそれが自らの心の声だったりするんですけど。

 もちろんジム・ジャームッシュの脚本も秀逸。と言うより登場人物のキャラクター作りがこの人は本当に巧い。
 過去の恋人探しをするようドンに勧める“隣人のウィンストン(しかも子沢山)”というキャラを思いついた段階でジャームッシュの勝ち(笑)。ドンとウィンストンが絡むシーンは今思い出しても笑えます。
 そして楽しみどころその2は、やはりドンが訪ねるかつての恋人たちのキャラクター設定。
 次々と現れる女性たち(女優も見どころ)を観ながら僕は、「コイツどんなボールでもキレイに受けちゃう好捕手みたいなヤツだな」と思いました。と、同時にドンがどういう人物だったかが分かってくる。そんな推察も楽しい。
 楽しみどころその3は音楽。ジム・ジャームッシュのセンスが見事なまで炸裂しています。
 僕が一番気に入ったのはエチオピアのアーティスト、ムラトゥ・アスタトゥケの「Yekermo Sew 」。この曲の不協和音がドンの心理と見事にマッチしていて、この曲が流れたシーンで僕は思わず吹き出しそうになりました。

 と、ここまで褒めまくりで来ましたけど、構成に関しては一言あります(笑)。
 かつての恋人を巡る旅は、訪ねて、話して、再び別れる、という展開にならざるを得ません。これは絶対に避けられない。でもこれが淡々と続くのはさすがに飽きました。途中一度でいいから“隣人のウィンストン”とのエピソードを挿入したら良かったのにと思いましたね。
 
 で、女性でご覧になった方。ぜひ感想を聞かせてください(笑)。

ブロークンフラワーズ

ブロークンフラワーズ

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • 発売日: 2006/11/24
  • メディア: DVD

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かもめ食堂 [2006年 ベスト20]

かもめ食堂」(2005年・日本) 脚本・監督:荻上直子

 劇場公開9週目。そして5月5日こどもの日。
 
恵比寿ガーデンシネマのチケット売り場に15:00の回は「満員」と表示されていた。
 僕が観た17:10の回も客席の7割は埋まっていた。
 
 「なぜだろう」 
 
 僕は不思議に思っていた。
 これだけヒットしていながら、この映画に関するウワサが今日まで聞こえて来なかったからだ。
 「荻上直子の新作は面白いのか、面白くないのか」
 僕の
興味はこの一点だった。
 劇場内の照明が落ちる。今から102分後にはその答えが出ているだろう。

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故郷の香り [2006年 ベスト20]

故郷の香り」(2003年・中国) 監督:フォ・ジェンチィ 脚本:チウ・シー

 「山の郵便配達」「ションヤンの酒家」のフォ・ジェンチィ監督作品。
 残念ながら僕は「山の郵便配達」を観ていないのですが(青物横丁のGEOに無いんですっ!)「ションヤンの酒家」は大好きで、「故郷の香り」は予告編で見た香川照之さんの演技に圧倒されて是が非でも観ようと思っていた1本です。
 
 北京から10年ぶりに生まれ故郷の村へ帰ってきたジンハーは、偶然にも初恋の相手だったヌアンと再会する。しかしヌアンの身なりは薄汚れ、生活に疲れきったような表情をしていた。
 ヌアンは幼なじみで聾唖の青年アーバ(香川照之)と結婚をし、6歳になる娘がいた。ジンハーは北京へ戻る予定を変更してヌアンの家を訪れる。そこで思い出すのはヌアンと交わした約束だった…。

 中国映画を観ていてときどき驚かされるのはそのロケーションです。
 「小さな中国のお針子」のときもそう思ったのですが、中国でなければ絶対に撮ることの出来ない雄大かつ素朴な風景がそこにあって、実は俳優以上に雄弁な被写体じゃないかと僕は思います。ちなみにこの作品のカメラマンの腕も素晴らしかった。
 俳優陣もロケーションに負けない素晴らしい演技を披露しています。
 特にヌアンを演じたリー・ジアと、その夫を演じた香川照之は本当に素晴らしい。話の展開が途中で読めてしまうので僕は比較的冷静に観ていたのですが、クライマックスは泣けました。

 原題は「暖~ヌアン~」ですが主人公はジンハーです。つまりこれはジンハーからみたヌアンの生涯というわけ。
 僕はどちらかというと保守的な人間なのでずーっとアーバの立場で観ていました。ところがラストシーン。ジンハーがヌアンの娘に言う台詞を聞いて「それを言わせちゃダメだろう」と脚本家に突っ込みを入れたくなったのですが、まもなく僕自身も過去に同じようなことを言った記憶が蘇り、「僕はアーバじゃなくてくジンハーだったんだ!」とショックを受けました。これは僕の物語でもあったなと。…すいません、ワケの分からないことを書いちゃって(笑)。ここだけ個人の日記になっちゃいました。

 僕は地方出身者で都会生活者だからこそ、この作品は懐かしくも心にチクリと痛い映画でした。
 ストーリーについて言うと何ヶ所か説明不足な点があるのですが(ジンハーから届いたヌアン宛ての手紙を破り捨てたアーバ。それを思い出したアーバが良心の呵責に苛まれるシーンがワンカットでいいから欲しかった!)
その欠点を補って余りある名作だと思います。
 中国のロケーションと、絶妙な編集の間と、観る者の感情の波に寄り添うような素晴らしい音楽をぜひ堪能してください。

故郷の香り

故郷の香り

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • 発売日: 2005/10/28
  • メディア: DVD

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バタフライ・エフェクト [2006年 ベスト20]

バタフライ・エフェクト」(2004年・アメリカ) 監督・脚本:エリック・ブレス、J・マッキー・グルーバー

 先日、我が社の中途採用面接に大手レンタルビデオショップの副店長という青年がやってきた。
 その青年は予てから「観るよりも作る側に回りたい」と考えていて、今回我が社の募集広告を見つけるや「好機到来!」と転職を決意したのだと言う。
 僕はそんな彼の動機にはまるで興味がなかったのだけれど、レンタルショップの副店長というプロフィールは面白かったので「じゃあ最近面白かった映画を何本でもいいから挙げてみて」と聞いた。すると副店長クンは「映画はDVDでしか観ないのでちょっと古くてもいいですか?」と前置きし、しばらく考えた末に「ビッグ・フィッシュ」と「クローサー」と「バタフライ・エフェクト」を挙げた。僕はどれも観ていないフリをして「何が面白かったのか説明してみて」と続けたら、なるほど映画の解釈は人それぞれ違うものだなあと感心するほどの迷解説。しかも僕が聞き上手だったのか副店長クンが悦に入ったのか話は一向に収まらず、それどころか“言っちゃ悪いですけど僕はアナタなんかと比べものにならないくらい沢山映画を観てますからね”と軽く人を見下したような素振りになる始末。あちゃー副店長クン、選んだ映画は良かったけど面接で図に乗ってアゴが上がっちゃダメなのよ。と、いうわけで彼はきっと今もどこかのレンタルショップで観る側として働いているはず、なのでした。

 さて。その副店長クンオススメの中で唯一僕が観ていなかった「バタフライ・エフェクト」なんですが、
 この映画は本当に面白いです。
 せっかくですから今日は、ただの「面白い」を「スゲー面白い!」にするための解説を少しだけ書きたいと思います。
 この作品は本編の冒頭で次のようなテロップが表示されます。
 
 「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる」
 初期条件のわずかな違いが、将来の結果に大きな差を生み出す、
 という意味のカオス理論のひとつ。

 前口上としては面白いけれど、はて?カオス理論とは何ぞや??と大半の人が思うはずですね。
 
広辞苑によるとカオス理論とは「初期条件によって以後の運動が一意に定まる系においても、初期条件のわずかな差が長時間後に大きな違いを生じ、実際上結果が予測できない現象。流体の運動や生態系の変動などに見られる」とある。…ふむ、難しい(笑)。
 このカオス理論を判りやすく説明するときに必ず持ち出される話が、アメリカの気象学者エドワード・ノートン・ローレンツのエピソードなんです。

 1960年。
 ローレンツが天気予報研究のため初歩的なコンピューターシュミレーションによる気象モデルを観察していたときのこと。ある検査結果の検証のため同一の気象データを初期値として入力すべきところ、その手間を惜しんだローレンツは「初期値の僅かな違いは結果に大きな影響を及ぼさないだろう」と小数点以下のある桁以降を省いて入力しました。ところがその結果はローレンツの思いに反して大きく異なってしまった。この体験をしたローレンツは、そもそも完璧な初期データというものが存在しない(人間には計測不可能である)ことを知り、気象の長期予報は不可能であるという結論を出したのです。これを「蝶の羽ばたきが数ヵ月後の台風の進路に影響を与えるかもしれない」という形で表現し、これがのちに「バタフライ効果(エフェクト)」と呼ばれるようになったのです。
 ようやく本題にたどり着きました(笑)。
 
 人は誰でも
自分の歩んできた分岐点を振り返ることがあります。
 最近ではニコラス・ケイジ主演の「天使のくれた時間」(2000)がそうでした。
 「あのときもうひとつの道を選んでいたら、自分の人生は一体どうなっていたんだろう?」
 “もしもの世界”はエンタテイメントの世界の重要な題材です。しかしこの「バタフライ・エフェクト」はたった一度の分岐点を振り返る物語ではありません。ここがまずこの作品の画期的なところです。
 僕たちは毎日、毎時間、1分、1秒、常にあらゆるジャッジを迫られ、実際にジャッジを下しています。それは実に何気ないことから重要なことまで。
 問題なのは「まったく意識せずに行った行為が、のちの予期せぬ事態の要因になっている」ということなのです。
 例えば、あなたの愛する人が今、交通事故にあったとする。その原因が10年前にあなたが何気なくしたクシャミのせいだったとしたら…?
 僕たちは「バタフライ・エフェクト」で描かれている事象を実際に体験することは出来ません。しかしだからこそ映画としての価値があると思うのです。
 
 「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起きる。
 では、蝶の羽ばたきを止めたなら、竜巻は起こらずに何が起きるのか…?」

 カオス理論をエンタテイメントに昇華させた最高傑作。必見です。

バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション

バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2005/10/21
  • メディア: DVD

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SMOKE [2006年 ベスト20]

スモーク」(1995年・アメリカ/日本) 監督:ウェイン・ワン 原作・脚本:ポール・オースター

 「エイプリルの七面鳥」に続く、荻上直子監督選「愛する人とおいしいものを食べたくなる映画10本」の第2弾。
 これはブルックリンのタバコ屋に集う客達の日常を描いた物語で(登場人物がやたらタバコを吸っているので「おいしいものを食べたくなる」かどうかは別にしても)これはとてもいい映画でした。
 この作品の佇まいを一言で表現するなら、“ときどき思い出して読み返したくなる短編小説”のよう。
 ポール・オースターの噛み応えのある脚本を、「ジョイ・ラック・クラブ」の監督、ウェイン・ワンが丁寧に咀嚼し、シンプルだけど奥深い映像に仕上げています。

 主な登場人物は、毎日同じ時間に店の前の写真を撮り続けるタバコ屋の主人オーギー(ハーヴェイ・カイテル)、銀行強盗に妊娠中の妻を殺された作家のポール(ウィリアム・ハート)、そしてクルマに轢かれる寸前のポールを偶然助けた黒人少年ラシード(ハロルド・ペリノー)。物語はこの3人を軸に展開します。
 映画の序盤。あまりに素朴で淡々と進むため、もしかしたら「面白みに欠ける」と思うかもしれませんが、圧倒的な存在感を放つハーヴェイ・カイテルの演技にぐいぐい引きずり込まれるのは必至。続いてタバコの煙の重さを量ろうとした男のエピソードを聞かされたが最後、きっと画面から目が離せなくなると思います。
 もしもそう感じなかったら。
 アナタはまだこの映画を観なくていい。これは「スクエアな客はお断り」の映画なのです。

 僕は観ている途中から「短編小説を読んでいるような感覚」を覚えていました。もちろんそれには列記とした理由があるのですが、興味を持った方はぜひ自分の感覚でもって確認して欲しいと思います。観ればきっと“映像の行間を読まされる”ことになると思うのですが、これは僕にとって「ホテル・ハイビスカス」以来の衝撃でした。
 エンディング。
 TOM WAITSの「Innocent When It Your Dream」に乗せたモノクロ映像は、ディナーの後に飲むエスプレッソのような味わいがあり、さらに粋でカッコ良かったのはエンドロール。THE JERRY GARCIA BANDの「Smoke Gets In Your Eyes」は「SMOKE」のエンディングに相応しい選曲で、かつ素晴らしいアレンジなのでした。
 
 僕はこの映画をときどき思い出して読み返すため、自宅の棚に常備しておこうと思います。

SMOKE

SMOKE

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2005/03/02
  • メディア: DVD

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THE 有頂天ホテル [2006年 ベスト20]

THE 有頂天ホテル」(2005年・日本) 監督と脚本:三谷幸喜

 僕は一映画ファンとして劇場が満員になっているとそれだけで幸せな気持ちになります。
 多くの人たちとスクリーンを共有し、そこで繰り広げられる芝居に一喜一憂し、皆で満足な表情を湛えて劇場をあとにすることが出来れば、これほど嬉しいことはありません。
 1月14日(土)ヴァージンシネマ六本木。21時50分の回は終了が0時を回るにもかかわらず9割の席が埋まっていました。公開初日とは言えこの作品に対する期待度がいかに高いかを物語っていたと思います。

 今日は先に結論から。
 「THE 有頂天ホテル」は実に良く出来た、素晴らしい作品だと思います。
 三谷幸喜さんの才能に、亀山千広、石原隆といった“テレビを知り尽くした人たち”の経験値がミックスされて、136分という長丁場もまったく飽きさせることなく見せてくれます。ボキャブラリーの少ない僕がときどき使う言葉ですが、それはまったくもって「感動的な仕事」と言っていい。ここまで緻密な脚本を一体どれくらいの時間で書き上げたのか、完成までのプロセスを取材したいくらいの出来でした。

 水を差すわけではありませんが、劇場を出たところでこんな声が聞こえたのも事実です。
 「(点数つけると)60点くらいかなあ。なんだかテレビの延長線上にある映画みたい」
 僕は三谷さんのテレビ作品を「やっぱり猫が好き」以外あまり観たことがないので、この評価が正しいのかどうかは分かりませんが「テレビっぽい」のは間違いありません。けれど最後まで飽きさせなかった一番の理由もここにあるんです。

 「THE 有頂天ホテル」は舞台の戯曲と違って映画用のオリジナル脚本ですから、短いシーンの積み重ねが可能です。戯曲の映画化って場合(三谷さんの「笑の大学」などもそうですが)、どうしてもワンシーンが長くなってしまうケースがあって、よほど脚本が優れていないと途中飽きられてしまうことがあります。
 劇場に足を運び、金を払って着席した客は少々退屈だからと言って隣の劇場へ逃げることはありません。しかしテレビの場合、視聴者はいとも簡単に隣のチャンネルに逃げることが出来ます。リモコン片手にチャンネルを頻繁に変える行為を「ザッピング」と言いますが、例えザッピングされても再びチャンネルを合わせてもらう、あるいはザッピングの途中でチャンネルを留めてもらうためには、途中から観ても面白く、リズムとテンポが良くて、飽きさせない作品を作らなくてはなりません。そういう意味でこの作品は「三谷幸喜」と「フジテレビ」という最強のタッグによって生まれた実に「テレビっぽい」傑作であると僕は思うわけです。

 もうひとつ書いておきたいのはこの作品の価値。
 仮にポッと出の新人作家がこの脚本を書けたとしても、ここまで豪華なキャスティングは不可能だったと思います。「三谷幸喜ブランド」とも言うべき三谷さんがこれまでに積み上げてきた実績と信頼があってこそ可能だった驚異のキャスティング。しかもこれがコメディ映画で、出演している俳優全員にそれぞれ見せ場があるところも見事としか言いようがなく実に感動的。その中でもやはり役所広司さんがダントツにカッコイイんだけど。
 僕個人はあるシーンで(多分アドリブだろうけれど)ケツを見せた西田敏行さんがサイコーに好きです。あのシーンで西田さんの芸人魂を見ました(笑)。
 
 2006年の最初を飾るに相応しい日本映画の傑作。
 ぜひ劇場に足を運んで、たくさんのお客さんと一緒に、大声で笑って来て下さい。
 僕ももう一度観に行こうと思います。
 では皆さん、劇場で逢いましょう。
THE 有頂天ホテル スタンダード・エディション

THE 有頂天ホテル スタンダード・エディション

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2006/08/11
  • メディア: DVD

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