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板尾創路の脱獄王(2009年・日本) [2011年 レビュー]

監督:板尾創路 脚本:増本庄一郎、板尾創路、山口雄大

 作品の存在は認知していた。
 しかし吉本興行が展開する独自の映画ビジネスの一端で、ただの「お試し企画」だと思っていたので、僕は観るまでもないと思っていた。
 ところが、監督2作目となる「月光ノ仮面」が完成し、来年公開になると聞いて驚いた。ということは「1作目が商売として成立した」ということなのか。そう思ったら気になったので観てみることにした。94分だからちょっとのガマンである。

 タイトル通り板尾創路が脱獄を繰り返すハナシだ。
 舞台は昭和初期。無銭飲食で捕まった鈴木雅之(板尾創路)は拘置所から脱走した。そこから抜けては捕まり、抜けてはまた捕まりを繰り返し、脱獄の罪が重なって懲役は70年を越えることになった。鈴木は何の目的で脱獄を続けるのか…。

 吉村昭の代表作「破獄」をパクったとしか思えない展開である。それだけで途中から観る気が失せた。しかも脱獄の理由はいつまでたっても明かされないので、「それがオチなんだな」と分かった瞬間から強烈な中だるみ。ちょっとのガマンどころか、何度早送りしようかと思ったことか。
 それを踏みとどまらせたのは國村隼と石坂浩二の存在である。板尾創路はバイプレイヤー2人を置いて何を描こうとしたのか。それを必死に推理していたら、答を見つける前にオチが来た。脱力。

 商業映画は誰かが得をしなければ成立しないものだ。
 本作に関して言えば、少なくとも観客は得をしない。では一体誰が得をして、2作目の資金も準備できたのか。まったく不思議でしょうがない。
 口直しに「破獄」を読み直すか。


板尾創路の脱獄王[DVD]

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  • 出版社/メーカー: よしもとアール・アンド・シー
  • メディア: DVD
破獄 (新潮文庫)

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  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1986/12
  • メディア: 文庫

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特攻野郎Aチーム THE MOVIE(2010年・アメリカ) [2011年 レビュー]

原題:THE A-TEAM  監督・脚本:ジョー・カーナハン 脚本:ブライアン・ブルーム、スキップ・ウッズ

 難しいことを考えずにスカッとする映画が観たかったらハリウッド作品に限る。
 その中でも本作は「アタリ」の1本である。実に爽快で面白かった。
 
 僕はオリジナルテレビシリーズを1秒も観ていないので、どんな内容なのか、どんなテイストなのか全く知らなかった。この作品を一言でいうなら「軍隊版ミッション・インポッシブル」だ。
 不可能を可能にするハナシは極めて映画的で、ハマれば抜群に面白い。ハメるために必要なのは「作戦内容の奇抜なアイディア」と「キャスティング」である。その好例が「オーシャンズ11」。
 この映画は「ゼッタイに無理」と言われたホテルの金庫を、ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットの2人がカッコ良く破るからヒットした。要するにハマるものがきちんとハマれば、この手の映画は確実に面白くなるのだ。
 
 本作の場合はリーアム・ニーソンとブラッドリー・クーパーの存在が大きい。
 部隊のリーダーとしてメンバーをまとめるハンニバルは冷静沈着で頭脳明晰。乗り込んだ戦車が空から墜ちようと決してあきらめない(しかも無事生還)タフな精神力の持ち主。リーアム・ニーソンの頑丈な鼻筋を見ているだけで、「この人はゼッタイ死なない」と思えてしまうから不思議だ(笑)。
 超ハンサムで女たらしのフェイスは刑務所内でも何故かフリーでいられる根回しの達人。女だけでなく男までも落とすブラッドリー・クーパーの笑顔は劇中だけでなく、この映画にとっても最大の武器だったかも。
 そしてチームがこなしていく作戦の手際の良さが(言い方を変えれば「編集の巧さ」だが)とにかく爽快そのもの。ハンニバルが作戦を語るシーンに、実行シーンを重ねる編集テクニックは決して目新しいわけではないが、テンポが絶妙で心地良い。
 また何気ない会話や、ちょっとしたアクションも間とセンスがいい。おかげで僕はずいぶん笑わせてもらった。ジョン・カーナハン意外とやるぞ。

 ドラマはAチームと軍とCIAの三すくみで展開する。これはオリジナルテレビシリーズを参考にしているようだ。Aチームの板挟み感はドラマとしてもなかなか良かったし、あまり頭を使わずとも楽しめる謎解きも、レベルが適当で良かった。
 とにかくスピード感にあふれていて、中だるみは無いし、溜飲を下げるクライマックスもなかなかのもの。個人的にはいい気分転換になった。
 それにしても「特攻野郎」というワードをひねり出した日本人は誰だろう。「白バイ野郎ジョン&パンチ」のパクリかも知れないが、馬鹿っぽさがいい具合に染み出た最高のタイトルだと思う。拍手。 

特攻野郎Aチーム THE MOVIE<無敵バージョン>ブルーレイ&DVDセット(初回生産限定) [Blu-ray]

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わが愛(1960年・日本) [2011年 レビュー]

監督:五所平之助 原作:井上靖 脚本:八住利雄

 時代に逆行した映画ばかり見ているせいで、当ブログの読者数は目減りし、記事の閲覧数も伸びなくなって来た。ま、そりゃそうだろう。でも僕は旧作邦画を観続けるのだ。なぜなら今の日本ではゼッタイに作られないだろう題材やテイストであったりするから。僕にとって「旧作邦画」は最早ひとつのジャンルなのだ。

 これはまず原作のタイトルに強く惹かれた。
 「通夜の客」
 通夜に足を運ぶのは故人を慕う近しい人たちである。それは漠とした関係ではなく、聞けば納得の間柄にある人たち。ではそんな中から井上靖はどんな客にフォーカスし、どんなドラマを書いたのか。想像してワクワクするのは僕だけだろうか。

 敗戦後4年の東京。元新聞記者、新津礼作(佐分利信)の通夜の席に美しい一人の女性が現れた。水島きよ(有馬稲子)と名乗ったその女性は、未亡人の由岐子(丹阿弥谷津子)の目を盗んで新津の死に顔を覗き込むと、そそくさと帰って行った。通夜の席にいた誰も知らなかったきよと新津の関係とは…。

 きよは新津の愛人である。
 その説明はしばらく無いが、冒頭きよの喪服姿を観た観客全員がそう確信したと思う。それほどきよの立ち振る舞いは穏やかではなかったし、そうと分かる有馬稲子の絶妙な演技も素晴らしかった。結果、観客は新津の家を出て行くきよを思わず追い掛けたくなるのだから、これほど巧妙な「つかみ」もないと思う。

 「通夜の客
」という客観タイトルが、映画化によって「わが愛」という主観タイトルに改められたのは、本編の大部分がきよの回想によるものだからだろう。
 きよは17歳のとき、新津から「大きくなったら浮気をしようね」と言われた言葉が忘れられず、やがて自ら進んで新津の愛人になるという、まこと男に都合の良いメロドラマになっている。
 新津からモーションをかけたのは「大きくなったら浮気をしようね」の一言だけ。あとはすべてきよからアクションを起こして、2人の関係が進展して行くのだ。
 この、あまりに「ご都合主義」な展開はさすがにいかがなものかと思ったのだが、実は「通夜の客」は井上靖の私小説で、自身の愛人問題を筆に託したとも言われているらしい。劇中きよの行動心理は理解に苦しむ点があるけれど、それもこれも井上靖の「切なる願い」が映画になったと思えば納得出来る。要するにこれは「井上靖の妄想映画」なのだ。
 ただ一方で「こんな女性も世の中にはいるかも」と思わせる有馬稲子の芝居も素晴らしい。
 ドラマの引っぱりは、新津の亡骸と対面したきよは、新津の顔が一瞬動いたのを見て、「私に何か言いたかったに違いない」と考える。その“言葉”を探るというものである。
 この結論はクライマックスで出るのだが、これこそが井上靖最大の願望だったと見た。
 
 善し悪しを量る意味で原作も読みたくなった。

井上靖短篇集 (第1巻) 猟銃 闘牛 漆胡樽 他

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  • 作者: 井上 靖
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1998/12/15
  • メディア: 単行本

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ドラゴンロード(1981年・香港) [2011年 レビュー]

原題:龍少爺/DRAGON LOAD  監督・脚本:ジャッキー・チェン 脚本:バリー・ウォン

 ジャッキー監督&主演作品で唯一未見だった1本。
 実を言うと僕は本作の存在を知らなくて、映画情報サイト「allcinema」でジャッキーのフィルモグラフィーを確認中、発見したときは本当に驚いた。まさかジャッキー監督作で未見の作品があったなんて、である。もっと驚いたのはallcinemaの解説の文面。そこにはこうあった。

 「彼のさまざまなアイディア、エッセンス、アクションが目一杯に詰まった、数あるジャッキー作品群の中でもまさに集大成と呼ぶに相応しい傑作中の傑作である。必見!」

 ここまで書かれて僕はさらに本作の存在を知らなかった自分を恥じた。
 「これではカンフー映画マニアの風上にも置けない」
 そこで僕は製作から30年目にしてようやく観たのだけれど、観たらさらに驚いた。

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モンキーフィスト/猿拳(1979年・香港) [2011年 レビュー]

原題:雑家小子/KNOCKABOUT  監督:サモ・ハン・キンポー

 ユン・ピョウ初主演作。
 日本での公開はジャッキー・チェンの「酔拳」(1979年7月)、「蛇拳」(1979年12月)、に続いて1980年1月。僕は公開当時に観て、ジャッキー作品とは一味違ったプロットが気に入り、32年間「もう一度観たい!」と思い続けていた懐かしい1本。今日、浜松町のとある書店のDVDコーナーに並んでいるのを偶然見つけて即買い。

 レイ(ユン・ピョウ)とマー(レオン・カーヤン)はちょっとマヌケな詐欺師。
 ある日、2人でまんまと質屋をだまし、あぶく銭を手に入れたまでは良かったが、その金を謎の男(サモ・ハン・キンポー)に横取りされる始末。食事も住まいにも困っていた2人は、食堂で出会ったカンフーの達人に弟子入りを志願する。ところがこの男は“古ダヌキ”と呼ばれるお尋ね者だった…。

 ジャッキー・チェンの「酔拳」などに見られる【主人公×師匠×仇敵】という三角関係は、様々なジャンルの作品で採用されて来た“鉄板”プロットである。中でも「選手とコーチ」という図式が明確なスポーツドラマは、多くの作品でこのプロットが使われている。「ロッキー」や「ベスト・キッド」はその代表作だ。
 本作「モンキーフィスト/猿拳」でも、【主人公×師匠×仇敵】という三角関係は採用されているが、「酔拳」「蛇拳」とは大きく異なる点が2つある。
 まずは主人公レイは単独行動ではなく、相棒を持つ設定であること。
 詐欺師で相棒と言えば「スティング」のニューマン×レッドフォードを思い出すが、タイプの違う2人がコンビを組むと、それだけでストーリーは転がせるのがいい。
 もうひとつは、最初の師匠がのちに仇敵となり、レイは新たな師匠の元で腕を磨くという点である。
 当時の僕が気に入ったのは、この「かつての師匠との対決」という捻りの効いたプロットで、しかもかつての師と対決することになる理由が、相棒を殺されてしまうという意表を突いた展開だったことも大きい。序盤はサモ・ハン得意のコメディ展開だっただけに、その衝撃はなかなかのものだった。
 ちょうど昨夜、僕はブルーレイで発売された「スター・ウォーズ」の新3部作を観終えたところで、「かつての師との対決」という図式は、ルーカスも採用したプロットだったかと驚いてしまった。

 当時22歳だったユン・ピョウの身体能力の高さも見もの。
 特に新しい師匠の元でのトレーニングシーンは、ブルース・リーにもジャッキー・チェンにも真似出来ないだろうと思えるほど、素晴らしいポテンシャルを発揮している。カンフー映画ファン必見。

モンキーフィスト/猿拳  デジタル・リマスター版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD

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エレクション(2005年・香港) [2011年 レビュー]

原題:黒社會  監督:ジョニー・トー 脚本:ヤウ・ナイホイ、イップ・ティンシン

 監督のジョニー・トー。
 代表作は挙げられないけれど、僕にとってはメジャー監督である。何故なら、僕は意外とこの人の映画を観ているからだ。
 金城武主演の恋愛ドラマ「ターンレフト ターンライト」(2002)。アンディ・ラウ主演のどん引きアクション映画「マッスルモンク」(2003)。ケリー・チャン主演のぺらぺらアクション映画「ブレイキング・ニュース」(2004)。駄作中の駄作ハードボイルド「エグザイル/絆」(2006)。
 はっきり言っておくと、どれも中途半端な映画である。だからさすがに僕も学習して「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」は観なかった。日本の映画会社がつけた怪しい邦題も「あえて観ない」ことにした理由の一つである。

 本作は、香港裏社会で最大勢力を誇る「和連勝会」の会長選挙を巡る抗争を描いたもの。
 前半は“会長の印”でもある竜頭棍(りゅうとうこん)の奪い合い。後半は組織をまとめる会長の疑心暗鬼が描かれるのだが、とにかく眠い。それは僕の睡眠不足が理由ではなく、ドラマそのものに締まりがないのだ。何故だろうと思ったら、この映画には銃によるドンパチが一切無かったのだ。
 マフィア映画で、しかも勢力争いを描いた作品で、銃の撃ち合いが無いのは史上初じゃないだろうか。ジョニー・トーにどんな意図があって、銃を使わなかったのかは知らないが、しかしそのチャレンジ精神は何の役にも立っていない。僕にとってはただ眠い作品でしかなかった。

 ドラマの結末もどうかと思う。
 会長選挙に勝ち、武闘派のライバルを手懐ける展開まではいいが、その先に待つものは恐ろしく意外な結末である。これは「観客の予想を裏切る」と言うレベルではなく、どちらかと言えば「人格設定の破綻としか言いようの無い展開」と言っておこう。僕は呆れてしまって、しばらくレビューを書く気になれなかった。
 ジョニー・トーは香港を代表する駄作監督である。続編もあるからと信じて観たのに、これはあんまりだ。と言うことで続編は観ないことにして、ジョニー・トー作品はすべて“地雷”であることをここに宣言する。

エレクション~黒社会~ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: エイベックス・トラックス
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バイオハザードⅣ アフターライフ(2010年・アメリカ) [2011年 レビュー]

原題:RESIDENT EVIL:AFTERLIFE 監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン

 最初からチェックしているシリーズモノを、途中で断ち切る勇気がないと、こんなものも未だ観るハメになる。ちなみに「どうでもいい」と思いつつ中断出来ないでいるのは、「アンダーワールド」と「トランスフォーマー」と「トワイライト」と「ワイルド・スピード」くらいか。あれ、意外とあるぞ。
 
 前作「」から3年ぶりの新作だから「多分前作のストーリーはおさらいしておいたほうがいいんだろうな」と思いつつ、面倒くさかったので止めた。そうしたら案の定、若干意味不明状態に陥ってしまった。どうして3年もブレイクがありながら、前作までの展開を冒頭で軽く紹介しないのか、僕は製作者の姿勢を疑う。観客は製作者が思うほど記憶力も良くないし、真面目でも律儀でもないのだよ。1作目からずっと関わっているアンダーソンはそこのところが分かってない。シリーズの流れを理解しているのは4作とも脚本を書いた君だけだ。アンダーソン君。

 全世界にアンデッドがはびこる中、アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は数少ない生存者を捜して世界中を旅していた。そして「ウイルスに冒されていない安全な場所がある」との情報を入手し、アリスはロサンゼルスへ向かった。そこで刑務所に隠れるようにして暮らす生存者たちと出会うのだが…。

 僕がこのシリーズを見続けていた最大の動機、「ミラ・ジョヴォヴィッチという女優を目で愉しむ」は、いよいよ限界に近づいて来たようだ。残念ながら今回まったくそそらなかった。そんな中、ロスの刑務所で暮らしていた数人の中に、クリスタル(ケイシー・バーンフィールド)という巨乳の女の子がいて、「ああ、今回はこの子が目の保養になるかも知れない」と思ったら、意外とあっさり退場してしまったので、あとはどうでも良くなってしまった(笑)。
 出オチかとビックリしたのは、刑務所からの脱出経路を知っているクリス・レッドフィールドが、「プリズン・ブレイク」のウェント・ワースミラーだったこと。クスッと笑わせるためだけのキャスティングなら、ずいぶん思い切ったことをしたもんだと、その勇気に感心。
 
 本作で唯一評価出来るのは、ゲームの世界観を若干だけど取り入れた脚本になっていたこと。
 ゲームに登場した「マジニ」という強力なキャラが出て来たり、クリスたちが水没した通路を素潜りで移動したり、ゲームをプレイしたことのある観客なら、ところどころ「お」と思うところがあるはずだ。
 それにしても次回作の予告でしかないエンディングにガッカリ。しかも本当に作るらしいから、SONYも思い切ったもんだ。次回作はもう観ないかなあ。

バイオハザードIV アフターライフ ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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もず(1961年・日本) [2011年 レビュー]

監督:渋谷実 原作・脚色:水木洋子 主演:淡島千景、有馬稲子

 久しぶりに強烈な映画を観た。
 これは「母と娘の究極の腐れ縁」映画。
 腐れ縁と言えば思い出すのは、男と女のズルズルの関係を描いた成瀬巳喜男の「浮雲」だが、調べてみたらいずれの脚本も水木洋子。なんという偶然。なんという筆致。驚きを越えて感動をしてしまった。

 新橋の三流小料理屋「一幅」で住み込み女中をしているすが子(淡島千景)のところへ、松山から娘のさち子(有馬稲子)が訪ねて来た。さち子は離婚をし、東京で美容師として生計を立てようと上京して来たのだ。しかし、そんな2人の対面は実に20年ぶりだった…。

 住み込み女中とは一種のホステスである。
 すが子には藤村というパトロンがいるが所詮は日陰の身。生産性のない関係が永く続き、気がつけば50歳になっていた。しかも一福の女将(山田五十鈴)とは折り合いが悪く、小言に口答えしては立場を危うくする始末。将来を不安に思いながら、その不安を客の酒で胃袋に流し込む日々だった。そんな折に上京して来た娘さち子。母は「娘と一緒に暮らせれば…」と計算する一方で、娘は「母のツテでどこかに仕事を探せれば…」という思いがあった。ただすが子にとって分が悪いのは、行動を起こしたのはさち子の方であって、すが子には渡りに船の幸運が舞い込んで来たに過ぎないことだった。さらに女の盛りが終わろうとしている母と、まさに今が華という娘との置かれている状況の違いも大きかった。

 主演2人の映画だが、ストーリーを牽引するのは「娘に依存する母」すが子である。そして一番の見せ物は「娘を自分の言いなりにしたい母親のあがき」である。
 すが子はご機嫌伺いのときには猫なで声を出し、思うようにならないと一気にキレる。淡島千景の演技も見事でその様は凄まじく、僕は自分の母親を見ているような錯覚にも陥り、嫌な気分を抱えながらエンディングを迎えることになった。
 旧い映画なのでネタバレを書かせて頂くが、すが子がさち子のために貯金通帳を残していた、というオチをして、本作のテーマは「親の心子知らず」と解釈する向きもあるだろう。しかし僕は「最期の最期、娘に母親への仕打ちを後悔させる復讐」ではないかと思った。それほどすが子はさち子を愛し、一方で恨んでいたのだ。
 母親との関係に悩む女子にはオススメかも知れない。そして自身がこの作品をどう受け止めるか、冷静に考えてみてもいいと思う。

 本作の見せ物はもうひとつある。それが「女の嫌らしさ」だ。
 水木洋子はとにかく女の嫌な部分を徹底的に書いた。それはすが子とさち子に留まらず、脇役陣にまで徹底している。一例を紹介しよう。
 すが子とさち子を下宿させている阿部ツネ(清川虹子)は、床に伏せているすが子とそれを看病するさち子の代わりに買い物に出た。雨の中、八百屋のリヤカー引きが大根を落としたのを見て、その大根を拾い、リンゴ2個と合わせて30円にまけさせる。ツネはそれらを52円と言ってさち子から代金を受け取るのだ。
 水木洋子の脚本はとにかく細かい。そして女が持つ“嫌な部分”を、何人もの登場人物に背負わせて“吐き出す”のである。それはそれは見事な描写という他ない。ただしどういう意味を込めてタイトルを「もず」としたのか、その真意は掴めなかった。

 女子必見。
 僕は他の水木洋子作品が気になって来た。


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「雲の墓標」より 空ゆかば(1957年・日本) [2011年 レビュー]

監督:堀内真直 原作:阿川弘之 脚色:堀内真直、高橋治

 神風特別攻撃隊を題材とした映画。モノクロ作品。
 特攻隊を描いた作品は数多くあるが、その悲劇性は誰もが知るところで、プロットも容易に想像がつくので僕はあまり観て来なかった。

 原作は昭和31年(1956年)4月に新潮社から発刊され、本作は翌年1月に公開されている。終戦後12年目。日本は戦前、戦中派が大多数を占めていた時代だ。だからか本作は特攻を頭ごなしに否定するものではない。その判断は観客に委ねる形でドラマは淡々と進んで行く。

 高校から同窓の吉野次郎(田村高廣)、藤倉晶(田浦正巳)、坂井哲夫(渡辺文雄)の3人は、大学で万葉集の研究をしていたが、昭和18年学徒兵として招集される。3人は海軍航空隊付きとなり、やがて特別攻撃隊に編成され、死と向き合う日々を送ることになる。
 吉野は非番の折りに偶然出会った娘、蕗子(岸恵子)を、坂井は母親代わりとして永年世話を焼いてくれた姉、さち(高峰秀子)を想いながら心の準備をする一方で、藤倉はなんとか死なずに済む方法はないものかと思案していた…。

 特攻映画を今まで観なかった僕が、本作を観た理由は先月「海軍」(1963)を観たことによる。
 この映画、僕は一海軍士官の立身出世物語かと思っていたら、最期は特殊潜航艇に乗り込み、真珠湾の藻屑と消えるという思いもよらぬ展開をする。僕は「海軍」を観て、一口に特攻映画と言ってもいろんなアプローチがあると知り、と言うことは、作り手によって作品に込めるメッセージも微妙に異なるのではないかと思って、本作を観ることにした。


 特攻映画には大きく3つのプロットがある。
 まず第一は「御国のために命を賭す価値と意義を巡る士官同士の対立」である。
 理不尽極まりない作戦を、若き士官がどう受け止めるかが特攻映画の縦軸であり、そこでの見解の相違と受け入れの時間差が最大の見どころと言っていいだろう。 
 本作の場合、主人公3人は3様の考え方を持ちながら、海軍生活によって徐々に「特攻致し方無し」と清濁併せ呑むようになる件が見どころになっている。「出来れば死にたくない。しかし選ばれたら最期従うしか無い」という無言の心中が丁寧な筆致で描かれていたと思う。
 第二は「想いを寄せた女性との別離」である。
 心を通わせている場合もあれば、一方通行の場合もある。いずれにしても“今生の別れ”の折に、その想いをどう決着させるのかが、もうひとつのクライマックスとなる。
 このプロット、本作では吉野のエピソードに集約されている。
 休暇で外出した際、美しい庭を見つけて見物を申し出た家の娘、蕗子に吉野は心を奪われる。やがて2人は心を通わせるようになるが、最期海岸での熱い抱擁は実は吉野の空想だったと言うオチでこのプロットは締めくくられる。この演出。下手にメロドラマを見せられるより、よほど吉野の潔さがにじみ出ていて良い演出だったと思う。
 第三は「息子を失いたくない家族の葛藤」である。
 なぜ我が子が自爆攻撃をしなけれればならないのか。そう思っていても声には出来ない。遺される家族、時に母親は胸も張り裂けんばかりの悲しみを負う。
 本作では、品川駅のホームで10分間だけ家族との面会が許される、というシーンがある。しかし会話は弾まず、各々差し入れの握り飯やミカンを並んで頬張るだけ。まさに「言えばすべてが愚痴になる」場面で心に痛い。
 出番は少ないが、吉野の父を演じた笠智衆が、家族の葛藤のすべてを抑えた演技で見せてくれた。父と子の最期の対面が妙にあっさりしているところが、また涙を誘う。

 全編を通して僕が一番感心をしたのは、高校も、大学も、ゼミも、そして海軍での配属先も同じだった3人が腐れ縁を振り返りながら、「出撃も3人一緒だといいな」と言わせておいて、実際に出撃命令を受けたのは、まずは坂井だけだったという展開。吉野と藤倉はここで一旦「助かった」と思ってしまうのだが、この些細な演出がとても巧かった。このシーンのおかげで観客は死と向き合って過ごした若者の気持ちを幾許か理解したはずだ。本編におけるベストシーンである。

 前後するが、吉野と蕗子は出会ってまもなくこんな会話をする。
 「あなたとは戦争のないときにお会いしたかった」
 「私も」
 「でも、その戦争のおかげでお会い出来たのだから、皮肉なものだ」
 いつの時代にも叶わぬ恋はある。しかし「戦争ほどの障害は他にない」と伝えるいいセリフだったと思う。
 主人公3人の感情を抑えた演技が心にしみる佳作。

雲の墓標 (新潮文庫)

雲の墓標 (新潮文庫)

  • 作者: 阿川 弘之
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1958/07
  • メディア: 文庫

<雲の墓標より>空ゆかば [VHS]

<雲の墓標より>空ゆかば [VHS]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: VHS

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鉄拳 ブラッド・ベンジェンス(2011年・日本) [2011年 レビュー]

「TEKKEN BLOOD VENGEANCE 3D」 監督:毛利陽一 脚本:佐藤大

 格闘ゲーム「鉄拳」キャラクターを使ったフルCG映画。しかも3D。
 「鉄拳」をプレイしていない人が観るとは思えないけれど、それでも一応忠告をしておくと、「鉄拳4」までプレイしていないとドラマの背景は理解し難く、さらに「鉄拳6」をプレイしていないと理解し難い登場人物が一人いる。
 僕は「4」まではプレイしていたので、三島財閥のおバカ権力闘争ドラマにはついていけたけれど、「6」で登場した新キャラ、
アリサ・ボスコノビッチだけは理解不能だった。

cast_photo03.jpg はい、このヒト。これで女子高生。
 驚くなかれ、こんな格好をした女子が共学の高校内をうろうろしているのだ。これじゃ「いつでも体育館の裏に呼び出して襲って下さい」と言わんばかりだが、劇中の男子高校生は誰もアリサ・ボスコノビッチにムラムラしていない。当たり前だ。これは「なんでもあ
り」のゲームアニメである。
 しかしフルCGで描いた世界がリアルであればあるほど、アリサの存在は違和感が増す。しかもその髪の毛の色はなんだ。お前は往年のシュミレーション・ゲーム「ときめきメモリアル」の藤崎詩織かっ。
 冗談はさておき。
 実はアリサ・ボスコノビッチは戦闘用ロボットで(おいおい)、両腕からはチェーンソー、背中からは翼が飛び出て、空を飛ぶことも可能。次世代型AIを搭載しているため、立ち振る舞いは普通の人間と変わらないのだとか。次世代型AIってナニ?
 いや、ゲームアニメなんだからいちいちツッコミ無用なのは分かっているけれど、じゃあ何のためのリアルCGなんだと、どうしても言いたくなる。
 「ゲームソフトメーカーがCG映画を作りたがる理由は何なんだ?」

 そんなギモンを抱くきっかけになったのが、
世界初のフルCG映画にして、映画史上最大の赤字を出した「ファイナルファンタジー」(2001年)だった。
 この作品は衝撃だった。CGのクオリティは確かに高かったけれど、制作費になんと1億3700万ドルもつぎ込んでいたのだ。翌2002年に公開された「スター・ウォーズ EP2/クローンの攻撃」は1億2000万ドルである。これも驚いた。「ファイナルファンタジー」より1700万ドルも安い。
 「じゃあ実写でいいじゃないか」
 多くの人がそう思ったと思う。もちろんそういうわけにはいかないのだけど。
 なんたって彼らはゲーム屋さんだから、絵を描くことは出来ても、絵を撮ることは出来ないのだ。だからフルCGということになる。ただし10年前も今もフルCGの弱点は変わっていなかった。それは人の顔の動きの再現である。
 顔の動きを再現するとき、例えば喋っているときは口だけ動かせばいいってもんじゃない。人間の顔の筋肉はとにかく活発に動いていて、これを再現するためにはとてつもない手間ヒマがかかる。相応のソフトが開発されれば別だろうが、そんなハナシは聞いたことが無い。顔で言えばもうひとつの弱点は「口腔」である。口の中、特に健康的な歯をリアルに再現したフルCGには未だお目にかかったとがない。

 アリサの場合は、彼女が戦闘ロボットと割り切れば許されるが、本作の主人公で生身の人間のリン・シャオユウの口腔までも再現能力の低い描写では、ハッキリ言って興ざめである。

 3Dについて。
 格闘映画にはむいていない、とは言わない。3Dで魅せる格闘映画を作ればいいのだ。しかしその演出には届いていない。3Dが“諸刃の剣”に見えた1本だった。

鉄拳6 PlayStation 3 the Best

鉄拳6 PlayStation 3 the Best

  • 出版社/メーカー: バンダイナムコゲームス
  • メディア: Video Game

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